バブル後最高値でも自分の株が上がらない=市岡繁男
日経平均株価はバブル崩壊後の戻り高値を更新している。それなのに自分が持っている株はまだかなり損をしているという人も多いに違いない。実はそれが普通なのだ。
図1は日経225の構成銘柄について、日経平均終値が年初来高値だった1月19日から10月2日の騰落率を示したもので、日経平均以上に値上がりしたのが78銘柄なのに対し、今なお値下がりしているのは147銘柄にのぼる。つまり、1対2の割合で値下がりしている銘柄のほうが多いのだ。しかも、15~20%も値下がりしている銘柄が33もある。
それなのに日経平均が高値を更新したというのは、いわゆる値がさ株など、日経平均に対する寄与度が大きい株が全体を押し上げたということである。今回、日経平均以上に値上がりした78銘柄の寄与度合計は59%なのに対し、その他147銘柄の寄与度合計は41%なので、いかに効率よく平均株価が上昇したかを示している。
これは日経平均が先物主導でつり上げられているということなのだろう。事実、東証1部上場株の時価総額をベースにするTOPIX(東証株価指数)は1月19日の高値1889.74を3.5%下回ったままで、10月2日の終値は1824.03である。「バブル崩壊後の戻り高値を更新」という報道の論調とはギャップがある。
まだ新しい相場は始まっていない
図2は、そのTOPIXの月足と超長期の移動平均をみたもので、1993年から続く上値抵抗線に7回も上値を抑え込まれてきたことがわかる。今、その抵抗線はだいたい1880ポイントの水準にあるが、そこを抜けた段階で初めて「バブル崩壊後の戻り高値を更新」し、新しい相場が始まったと言えるだろう。
一方で、超長期の株価トレンドを示すTOPIXの30年移動平均は16年5月に1413ポイントと戦後のピークをつけ、現在は1391ポイントとゆっくりと下向きに転じ始めた。30年とは1世代のことである。株価の先見性を信じるならば、これは一つの時代の終わりを告げるシグナルであるとも読める。
もし、それが戦後の繁栄から衰退へのシフトを意味するものだとしたら、たとえ上値抵抗線を抜けたとしても、そこから始まる「新しい相場」はインフレでかさ上げされた歓迎せざる株価上昇となるのかもしれない。(市岡繁男・相場研究家)