『銀行の終わりと金融の未来 ジ・エンド・オブ・バンキング』 評者・白井さゆり
著者 ジョナサン・マクミラン(マクロ経済学者、投資銀行家) 桜田直美訳 かんき出版 1700円
貨幣創造機能を奪え 斬新な新金融システム論
銀行が世に存在する最大の意義は、預金受け入れと貸し出しをもとに「貨幣創造」ができることにある。企業Aが銀行からお金を借りると同額が企業Aの預金口座に振り込まれ、預金が創造される。企業Aが借りた資金で生産機械を購入すれば、機械メーカーBの預金口座に購入代金が振り込まれる。銀行は増えたB企業の預金を元手に企業Cに融資をすると新たな預金(貨幣)が創造され、経済活動が活性化していく。また、銀行が小口預金を集めて大口貸し出しへ転換し、預金者がいつでも預金引き出し可能なビジネスが成り立つのは、(1)貸し出し増加による利ざやの確保、(2)融資先の分散によるリスク管理、(3)自己資本による損失吸収力を実現させているからだ。
この銀行の特殊な役割が資本主義経済の発展を下支えしてきたし、中央銀行の金融政策運営でもこの貨幣創造に頼っている。しかし、銀行が過剰にリスクを取って金融危機と深刻な景気後退を繰り返す元凶ともなってきた。世界金融危機後の金融規制強化によって銀行は過剰なリスクを取れなくなったが、規制が緩いシャドーバンキング(影の銀行)は膨張を続け、銀行を超える規模に成長。マネー・マーケット・ファンドのように債券を組み…
残り651文字(全文1227文字)
週刊エコノミスト
週刊エコノミストオンラインは、月額制の有料会員向けサービスです。
有料会員になると、続きをお読みいただけます。
・1989年からの誌面掲載記事検索
・デジタル紙面で直近2カ月分のバックナンバーが読める