トランプ再選が険しい道になりそうな理由=古本陽荘 WASHINGTON D.C.
2019年年明けに始まる米連邦議会は、上下両院の多数党が異なる「ねじれ議会」となり、トランプ大統領の政権運営はますます困難になるとみられている。20年大統領選でトランプ氏が再選を果たすかは、今後の政局の展望次第でどちらにも転ぶというのが実態だ。だが、18年11月6日投開票の中間選挙結果を分析すると、再選に向けた道筋はなかなか険しいものになりそうだ。
中間選挙については当初、「微妙な結果」との受け止めがあった。共和党が上院の多数派を維持したことに加え、民主党の勝ち幅がそれほど大きくないとみられていたためだ。18年11月8日付の『毎日新聞』朝刊では、日本時間7日午後8時半現在、下院全435議席(任期2年)のうち民主党が過半数の218議席を超える222議席、共和党は199議席を獲得と報じている。民主党の現有議席は193で、この時点では29議席増だった。
区割りは有利だが
ところがその後、議席が決まっていなかった接戦区で民主党が相次いで勝利し、少なくとも40議席増(ノースカロライナ州下院第9選挙区では不正投票の疑いが浮上し18年12月11日現在で未確定)が決まった。
米国では下院の議席は10年に1度の国勢調査の結果により各州に割り振られる。ただ、州知事や州議会の多数党が選挙区の区割りの線引きで大きな権限を持つ。線引き次第で数十議席が動いてしまうと言われる。前回区割りが変更されたのは、共和党が大勝した10年中間選挙の後で、現行区割りは共和党にかなり有利になっている。それにもかかわらず、今回、民主党が40議席を増やした。これはオバマ前大統領に厳しい審判が下された10年中間選挙で63議席を増やした共和党の躍進に匹敵する勝ち幅という評価も出ている。
上院については、共和党は51議席から2議席増やした。だが、全100議席(任期6年で3年ごとに3分の1を改選)のうち今回選挙があった35選挙区(2補選含む)だけでみると民主党(無所属含む)の24勝に対し共和党は11勝だ。トランプ氏は選挙直後の記者会見で「大勝」と豪語したが実態を反映したものとは言い難い。
議席がなかなか決まらなかった接戦区には、大都市郊外の選挙区が多く含まれていた。比較的裕福な知的水準の高い有権者が住む地域とされる。特にこうした地域に住む女性の「嫌トランプ傾向」が顕著だった。
トランプ氏が、16年大統領選で得票数では民主党候補のクリントン元国務長官に負けていたほどの僅差の勝利だったことを考えると、同じ傾向が続いた場合には大統領再選は容易ではない。
本来であれば年明けから政策転換で立て直しを図るタイミングだ。だが、トランプ氏は支持基盤を広げる姿勢を一切見せていない。労働者階級やキリスト教右派の支持固めを優先する姿勢を堅持するつもりのようだ。議会では「移民締め出し」のための予算が与野党対立の主要テーマだ。だが、移民の多いネバダ、アリゾナ両州の上院選は民主党が接戦を制した。こうした州では反移民の姿勢は20年大統領選で民主党を利する可能性が高い。
トランプ氏が応援に入る演説会場はどこも活気にあふれていた。中核にいる支持者は離れていない。だが、その支持層だけでは過半数を制することは事実上不可能だ。スキャンダルにまみれ、好調な経済も今後、下降局面に入るとの予測もあるなか、トランプ氏再選に向けた最大の好材料は、現時点で民主党に有力な候補者がいないことと言えそうだ。
(古本陽荘・毎日新聞北米総局長)