舞台 平成31年初春歌舞伎公演 通し狂言 姫路城音菊礎石=小玉祥子
播磨国の家老が起こすお家騒動 激しい立ち回りや趣向が楽しみ
姫路城に美しい魔物が住むという伝説に題材を取った歌舞伎「姫路城音菊礎石(ひめじじょうおとにきくそのいしずえ)」が、尾上菊五郎らの出演により、1月の国立劇場で上演される。
「袖簿播州廻(そでにっきばんしゅうめぐり)」(並木五瓶(なみきごへい)作)の題で安永8(1779)年3月に大坂角座(おおさかかどざ)で初演された。大当たりを取り、3カ月にわたって上演されたが、その後再演はなく、212年ぶりの復活上演が、1991年3月の国立劇場であった。今回は、それ以来の上演となる。
姫路城がそびえ建つ丘陵は古くは「姫山」と呼ばれ、築城以前から、刑部(おさかべ)(長壁)神を主神とする神社があったが、羽柴(豊臣)秀吉が姫路城の前身となる城を築いた時に、城下に移された。そして慶長14(1609)年、現在の城が池田輝政によって完成される。それから間もなく怪異が起きたため、たたりを恐れた輝政は、神社を城内に祀(まつ)り直した。
そんなこともあってか、天守には十二ひとえに緋の袴(はかま)を着た体が約一丈(約3メートル)あまりも伸びる刑部(小坂部)姫という鬼女が現れる、という伝説が生まれる。素材は芝居にも取り込まれた。そのひとつである泉鏡花の「天守物語」は歌舞伎や新派で頻繁に上演される人気演目だ。
室町時代に姫路城の城主、桃井(もものい)家でお家騒動が起きる。家老の印南内膳(いんなみないぜん)(菊五郎)の陰謀で、当主親子や忠臣の古佐壁主水(こさかべもんど)(尾上松緑)は殺害される。没落した桃井家を救うため城主の妻の碪(きぬた)の前(中村時蔵)は、姫路城に妖怪が出るという噂(うわさ)を広め、腕試しに来た勇者を味方に引き入れようとする。死んだはずの主水はよみがえって平作と名を変え、女房のお辰(たつ)(尾上菊之助)と力を合わせ、桃井家ゆかりの人々を悪人から守ろうとし、桃井家に恩のあるキツネの夫婦、与九郎(よくろう)(松緑)、小女郎(こじょろう)(菊之助)も懸命に働く。
善人と見えた内膳が実は大悪人であったというどんでん返し、平作とお辰、与九郎と小女郎という人間、キツネ、それぞれの夫婦の活躍と悲劇を織り込みつつ、スペクタクル性豊かな物語が展開される。原題に「播州廻」とあるように、播州(播磨(はりま)国。現在の兵庫県の一部)の名所が多く登場するのも見どころだ。
菊五郎が主軸となっての国立劇場での歌舞伎公演も正月恒例で、菊五郎劇団ならではの激しい立ち回りや趣向などを楽しみにする観客も多い。
「善人を装った悪人をどう作っていくかです。例年とは違う趣向を考え、初春歌舞伎らしく、明るく楽しくテンポアップしたわかりやすい歌舞伎を作りたいと思います」と菊五郎は話している。
(小玉祥子・毎日新聞学芸部)
会期 2019年1月3日(木)~27日(日)
会場 国立劇場(東京都千代田区隼町4-1)
料金 特別席1万2500円
1等A席9800円
1等B席6400円
2等A席4900円
2等B席2700円
3等席1800円
問い合わせ 国立劇場チケットセンター(午前10時~午後6時)
TEL0570-07-9900