年内にも登場、高GABAトマト
日本でゲノム編集食品のトップバッターになりそうなのがGABA(ギャバ)を多く含むトマトだ。GABAは高血圧の予防につながるとされる成分で、食材のなかでもトマトには多く含まれるが、筑波大のチームはゲノム編集により、含有量がより多い品種を生み出した。
高GABAトマトはどう開発されたのか。植物のなかでGABAを合成する酵素は普段は活動を抑える“フタ”で覆われているが、植物にストレスがかかった状態になるとこのフタが外れ、GABAが合成される。そこで、GABAを合成する酵素の活動を抑えるフタ部分を、ゲノム編集技術のクリスパー・キャス9によって除き、常にGABAが合成されるようにした。実った品種は、ゲノム編集を施していない品種の15倍にあたる、100グラム当たり125ミリグラムのGABAを含むという。
GABA含有をうたったトマトは、カゴメ、それにタキイ種苗が出資する農場がそれぞれ機能性表示食品として18年11月下旬以降、販売している。いずれも従来品種で、栽培管理や品質管理によってGABA含有量を安定させ、機能性表示を可能にしたものだ。含有量は100グラム当たりに換算すると15~20ミリグラム。これがゲノム編集だと含有量は数倍に跳ね上がることになる。
ゲノム編集による高GABAトマトの商品化を担うのはサナテックシード社だ。種子会社パイオニアエコサイエンス社(東京都港区)が18年4月、ゲノム編集により品種改良された種子を生産・販売するため設立。筑波大発ベンチャーとして承認されており、開発チームの江面浩・筑波大学教授が取締役最高技術責任者に就いた。
サナテックシード社は、19年末のトマト果実の販売開始を目指している。当初は生産量が少ないこともあり、江面教授は「ゲノム編集であることを理解したうえで食べてみたいという方に販売したい」と話す。
(編集部)