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米・イラン対立 トランプ氏が直前に攻撃撤回 「大統領再選」を最優先か=会川晴之

    イランに追加制裁を科す大統領令に署名するトランプ米大統領=6月24日(Bloomberg)
    イランに追加制裁を科す大統領令に署名するトランプ米大統領=6月24日(Bloomberg)

     米国とイランが一触即発の情勢にある。トランプ米政権は、イランが6月20日に米国の無人偵察機を撃墜した報復として、いったんはイラン攻撃を決めた。だが、実施直前にトランプ氏は決定を覆す。政権に強い影響力がある著名キャスターが「攻撃は惨劇を招く。大統領再選の可能性もなくなる」と助言したことが翻意の一因とされる。

     このキャスターは米保守系メディア「FOXニュース」のタッカー・カールソン氏。平日夜8時からの番組を担当し、大統領も熱心な視聴者と言われる。米『ニューヨーク・タイムズ』紙によると、イランとの緊張激化を受け、開戦は絶対に避けるべきとの考えを大統領に伝えたという。

     攻撃撤回翌日の21日の放送でカールソン氏は、イラン攻撃を主導するボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)を「官僚組織の寄生虫」と痛烈に批判。トランプ氏も翌22日、これに呼応するかのようにボルトン氏を「タカ派」と呼び、「彼とは必ずしも一致しない点がある。決めるのは私だ」と攻撃見送りは自らが主導したと説明した。

     大統領就任以来、トランプ氏は2020年11月の次期大統領選で再選を最優先課題に据えている。18年5月にオバマ前政権が15年に結んだイランとの核合意からの離脱を決めたのも、反イラン派が大勢を占める保守派の支持を得やすく、再選に有利に働くと見たからだ。こうした事情もあり、保守派の動向を詳しく伝えるFOXニュースのチェックは欠かせない。

     核合意離脱以後、緊張が高まった米国とイランとの関係は、今年5月に米政権がさらなる制裁強化を打ち出したことで急激に悪化した。日本や中国などがイラン産原油の調達を断念し、核合意後に日量280万バレルに達したイランの原油輸出量は5月には50万バレル以下に急落した。

    「Bチーム」主導

     政権内でイランへの圧力強化を主導するのはボルトン氏。ポンペオ国務長官がこれに呼応する。2人は就任前にイランの体制転換や攻撃論を主張するなど、筋金入りの反イラン派として知られる。いずれも穏健派だったティラーソン国務長官やマクマスター大統領補佐官の後任として昨年春に就任。反イランを掲げるイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相や、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン皇太子とも連携しており、彼らの頭文字を取り「Bチーム」と呼ばれるほどだ。

     一方、これまで核合意を順守してきたイランも、米国が5月に制裁強化に踏み出したことに強く反発、核活動拡大という対抗措置に踏み切った。6月27日には濃縮ウランの保有量が、核合意に定める規定を上回る見通しだ。

    「最大限の圧力」をかけてイランの譲歩を促す米政府の戦略は「経済的にはともかく、政治的には成功していない」(米専門家)まま混迷が増すばかり。大統領選まであと1年4カ月となり、出口の見えない状態が続いている。

    (会川晴之・毎日新聞前北米総局長)

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