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英原発輸出を諦めない 日立製作所の執念

「日立製作所は原発輸出を諦めていない」(資源エネルギー庁高官)。日立は今年初め、英国で進める同社100%子会社ホライズン社の原発計画(135万キロワット×2基)の中断を決定したが、日本初となる原発輸出への執念はまだ捨てていないようだ。

 2012年、日立によるホライズン社買収をリードしたのは、同社の現会長であり経団連会長の中西宏明氏だった。東芝と競ったうえで、ドイツ企業から適正価格の2倍以上とされる約930億円で買収。日本の制度融資や貿易保険を取り付け、英政府による出融資も確保していたが、採算が取れないことを理由に中断を決めた。

 しかし、原発輸出は安倍政権が掲げるインフラ輸出の柱。原発技術の継承や技能者育成にも必須として、日立は実現に大きな期待を寄せていた。19年3月期に日立は中断に伴い3000億円の減損を計上しており、完全撤退となれば、さらなる売却損も出る。

 英国政府はRAB(規制資産ベース)と呼ばれる新しい契約形態で出資企業が建設段階からリターンを得られる方式を模索しているが、実際に機能するかは未知数だ。英国のEU(欧州連合)離脱をめぐる混乱も収まる気配はない。

 日立は8月、東芝、東京電力、中部電力と共同で沸騰水型軽水炉事業の共同事業化の検討で基本合意したが、それでも原発輸出の道のりは遠そうだ。

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