マーケット・金融

株価が暴落しても追加緩和を「やってはいけない」理由=木内登英

    新型コロナ・ウイルスの感染拡大をうけ、株式市場が大幅に下落しています。

    そんな中、日銀は3月2日、6日、9日と、1000億円規模のETF購入を発表。黒田日銀総裁は「必要なら躊躇なく追加緩和する」と発言するなど、経済動向に応じた追加緩和の可能性が取りざたされています。

    一方、追加緩和は「非常に危険な政策」と語るのが、野村総合研究所エグゼクティブ・エコノミストの木内登英氏です。

    2012年から5年間、日銀審議委員をつとめ、その間にマイナス金利政策の導入など追加緩和措置に反対票を投じた木内登英氏は、追加緩和の「副作用」をどう分析しているのでしょうか。

    世界経済の崩壊シナリオを分析した書籍『世界経済、最後の審判』(木内登英著、毎日新聞出版刊)より一部抜粋をお届けします。

    追加緩和はなぜ危険なのか?

    世界経済がこの先、後退局面に陥った際に、各国ともに金融緩和策で対応できる余地は、かなり限られている。

    主要中央銀行のなかでECB(欧州中央銀行)と日本銀行は、中銀当座預金に付される金利をマイナスにする、いわゆるマイナス金利政策を導入している。これは、長らく政策金利の限界とされてきたゼロ金利制約を打ち破ったものと考えることができる。

    そのため、ひとたび経済情勢が悪化すれば、その金利のマイナス幅をさらに拡大することは、理論上は可能である。

    しかしだからといって、中央銀行が限界のない政策手段を手に入れたと考えるのは、全くの誤りである。

    マイナス金利が金融機関の収益を悪化させ、金融システムを潜在的に不安定にしているという副作用を各中央銀行が強く認識しているなかでは、マイナス金利幅の拡大余地は、実際には限られるだろう。

    また、マイナス金利の幅をさらに拡大した場合、民間銀行が中銀当座預金を取り崩して現金保有を拡大する、あるいは民間の預金金利も仮にマイナスとなれば、個人もやはり銀行預金を取り崩して現金保有を拡大する。そうなれば、マイナス金利の政策効果は大きく削がれてしまうだろう。

     この面からも、マイナス金利の幅を拡大する政策対応の余地は実際には限られる。

    日銀による国債買入れ策の「副作用」

     他方、国債を買入れる資産買入れ策については、ECBは国債の買入れ増加額を段階的に縮小し、二〇一八年末にはネット買入れ額(新規買入れ額―償還額)をゼロとした。

    日本銀行も、二〇一六年九月以降、国債買入れ増加額を縮小し続けている。

    こうした背景には、ECBと日本銀行が、金融機関から大量に国債を買入れ続ける中、量的な面での限界が見えてきたことがあるだろう。

    さらに、大量の国債買入れは、市中での国債取引を停滞させ、いわゆる流動性を大幅に低下させるリスクが高まる。

    こうした流動性が極度に状態した下で、何らかのショックが起これば、国債の価格の

    変動幅が大きくなる、つまり金利が大きく変動して、金融市場や国債を保有する金融機関の財務環境に、甚大な悪影響を与える可能性も懸念される。

    これが、両中央銀行ともに国債買入れ増加額を縮小させてきた背景にある。

     ところで、世界経済が後退に陥るとともに、世界的に金融市場が不安定になる際に、中央銀行が再び国債買入れを増加させれば、流動性を極度に低下させることで国債市場に混乱を生じさせ、金融システムや経済をより不安定にさせてしまう可能性がある。

    中央銀行はこうしたリスクを十分に認識しているため、金融危機が再燃しても、国債買入れの大幅な再拡大には慎重であろう。

    そのため、資産買入れ策においても、金融緩和の余地は実際には限られるのである。

    ただし、日本では、日本銀行が政府からの要請で国債買入れ再拡大を余儀なくされるリスクはなお残されている。

    それは、景気悪化時に政府が新規の国債発行増額を通じて財政支出の拡大を行ない、それとの協調策として日本銀行に対して、国債買入れの再拡大を求めるケースである。

    既に述べた点を踏まえると、これは非常に危険な政策だ。

    (書籍『世界経済、最後の審判』より抜粋)

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