新型コロナショックによる「REITの投げ売り」が直撃する「ホテル業界」の行く末=関大介(アイビー総研代表)
新型コロナウイルスの影響が2020年2月下旬になり、好調だったJリート(日本版不動産投資信託)市場に波及した。新型コロナウイルスが経済に与える影響が大きいという懸念が広がり、投資家が全面的にリスクオフ(回避)の動きとなったためだ。上場投資商品であるJリート価格も急落するのは当然だ。
東証REIT指数は3月9日に前日比6・4%(下げ幅で131ポイント)下落し、2000ポイントを大幅に割り込む1912ポイントで取引を終えた。下落率は、リーマン・ショック時(08年9月16日)の7%に迫る下落率となり、投資家が「投げ売り」状態になったことがうかがえる。
変動賃料契約
ホテル系リートは新型コロナの発生前から事業環境が悪化していた。18年にインバウンド(訪日客)の24%を占めていた韓国人訪日客が、日韓関係の悪化により19年夏以降急減。さらに今回の新型コロナの影響で、インバウンドの最大比率を占める中国人訪日客だけでなく、日本人の国内旅行も大幅な減少が避けられない状況だ。
さらにマイナスに働く可能性があるのが、変動賃料契約だ。ホテル系は売上高に応じて賃料が変動する変動賃料契約の割合が高く、変動賃料の比率が30%以上の銘柄が5銘柄だ。事業環境の変動に左右されない固定賃料契約と比べて、事業環境が悪化しホテル系の売り上げが落ち込む時は、Jリートがオーナーに支払う賃料負担が全体の収益に与える影響の度合いは大きい。今後、ホテル系銘柄は大幅な業績予想の下方修正が必要になるだろう。
ホテル系以外のリートへの影響も否定できない。新型コロナがオフィス賃貸市場に影響を与えるような事態になれば、Jリート市場全体は当面、回復が難しくなる可能性もある。ワーストシナリオは、企業業績の悪化によりオフィスビルの解約が増加し、その空室を埋めるために低い賃料単価でテナントを誘致する動きが広がることだ。こうした状況は11年3月の東日本大震災後のオフィス市場で現実化していた。
ただし、現在のオフィスビル賃貸市場は歴史的に低い空室率が示す通り、極めて好調な状態だ。都市再開発ブームの下で大量のオフィスビル供給が続き、テナントの需要は強い。20年の新規供給分は大半のテナントが決定しているとみられる。空室率が高い中で大幅な供給が続いた11年とは事情が異なっている。さらに図の示す通り21年以降は供給量が大幅に減少する。オフィス市場に新型コロナの影響が波及したとしても限定的と見ている。
今後の頼みの綱は、Jリートの価格上昇のけん引要因である米国債だ。米国債の利回りは新型コロナの影響で20年はさらに低い状態で推移することになるだろう。そうなると、Jリートの高い配当利回りが改めて注目される可能性がある。つまり、市場の混乱が収束すれば、Jリート価格は大幅な反発を示す可能性が高いと見ている。
■関大介(アイビー総研代表)
(本誌〈Jリート ホテル系に打撃、回復は金利次第=関大介〉)