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新型コロナで大注目!今さら聞けない「オンライン診療」の使い方(後編)【サンデー毎日】

車に乗ったままPCR検査を受ける「ドライブスルー診察」のデモンストレーション=奈良市七条西町で2020年4月20日午後2時51分、藤井達也撮影
車に乗ったままPCR検査を受ける「ドライブスルー診察」のデモンストレーション=奈良市七条西町で2020年4月20日午後2時51分、藤井達也撮影

新型コロナウイルスの感染拡大で医療崩壊が懸念される中、病院や診療所に行かずに済むオンライン診療に期待が寄せられている。

4月13日からは、時限措置ながら初診でも可能になった。

自分も人も守るため、どう使いこなせばいいのか。味方につける術を探ろう。

(「前編」より続く)

オンライン診療だと保険が効かない? 

外出自粛要請下にあって、オンライン診療は大きなメリットには違いない。だが、そこにはリスクも伴う。

ケースによっては、対面と違い検査や触診ができず、正確な診断に至らないおそれもある。

前出の宮崎院長も、こう警鐘を鳴らす。

「2015年と比べると制度が整ってきているのは確かですが、急ぎすぎると、安易に処方箋を出すような制度の悪用が増える懸念もあります。今は形が整う過渡期だと捉えています」 

また、すべからく公的医療保険が適用されるわけではなかった。

前述した通り、18年4月にオンライン診療料が設定された際、保険適用の疾病が限定されたためだ。

それこそが普及の最大の妨げになってきたと声を大にするのが、黒木医師である。

「保険診療体制では、オンライン診療料を適用できる疾患が決められていて、しかも診療報酬が少ない。そのため外来、在宅、入院に次ぐ、第4の選択肢であるオンライン診療が、かなり使いづらくなっています」 

たとえば、高血圧や喘息の治療なら対面診療と組み合わせることで保険適用になるが、花粉症治療は対象外なのでオンライン診療料を算定できない。

18年4月以前からの継続治療の場合は例外的に保険適用とされるが、新規に組み込むことは不可能だった。 

今回からは公的医療保険で対象疾患を限定されないことになったが、あくまで時限的・特例的な措置にすぎない。

また、医療者側にとっては経済的メリットが小さいため、積極的に導入する病院が増えにくい面もある。

「正直なところ、病院の運営という意味ではオンラインを勧めるメリットはありません。特例措置でもオンライン診療の保険点数は電話診療の場合と同じです。時限的な措置でもいいので、オンライン診療加算を作るなどして、電話とは違う対面並みの評価がなければ、普及は進まないと思います」(前出・山下理事長)

医療行為「一歩手前」の「オンライン相談」を活用しよう

初診解禁日の4月13日、前出の外房こどもクリニックにはオンライン診療に関する相談が数件寄せられた。だが、解禁でも殺到するわけではなかったのは、前述した通り、患者側、医療者側双方にさまざまな制約があるためだろう。

いきなりオンライン診療は敷居が高いと思う人は、その前段のオンラインで医療相談をしてから、という手もある。 

スマホやパソコンからインターネットにつないで医師などの専門家に医療相談ができるもので、オンライン診療のような医療行為には当たらない。

処方箋も書いてもらえず、公的医療保険も適用されないが、症状から推測できる「一般的な」疾患や予防について助言を受けられる。

言わば、病院を頼る一歩手前にあるサービスで、オンライン診療との違いは図の通りだ。 

このオンライン医療相談は、新型コロナウイルスの猛威が身近に感じられるようになってきた2月中旬ごろから需要が目立って伸びているという。

ビデオ通話のみならず、チャットでもできる気軽さは大きい。 

たとえば、月額550円(税込み)で利用できるチャット型医療相談サービス「first call」には、この頃から自身の感染を疑う人より効果的な予防策の相談が多く寄せられるようになった。

また、小児科と産婦人科の相談サービス「小児科オンライン」と「産婦人科オンライン」を運営するキッズパブリックも「病院に行って感染するのは避けたいのでオンラインで、という動機でのご相談をいただくようになりました」(同社広報)。 

オンライン医療相談を効果的に利用する方法として、first callを運営するメドピアはこう助言する。

「最適な助言を受けられるよう、症状や発症時期などの情報を整理した上で相談することをお勧めします。また、『家での対処法を知りたい』『病院に行くべきタイミングを知りたい』など求める情報を明示すると、より正確なアドバイスが得られるようになります」(同社広報)

加えて、優良なサービスを選ぶ意識も大切だ。小児科の相談に整形外科医が対応するといった専門外の医師が応じるケースも目にした。回答者の専門性を明記したサービスを利用するのが安全だ。

自粛中の健康維持にアプリを活用

さらに、スマホを利用した、より身近な健康維持の動きもある。日々の健康チェックをメモしてもいいが、スマートウォッチや歩数計と連携すれば、日々の運動量や睡眠時間、体調などがほぼ自動で記録できる。

19年末には、医療機器としての薬事認証を取得したウェアラブル血圧計「HCR―6900T」がオムロンから売り出され、高精度なデータを日常生活の中で取り込むことができるようになってきた。

患者自らが体調や治療薬の副作用などの情報を記録する手法は「患者報告アウトカム(PRO)」と呼ばれ、一部の大学病院ではすでにがん患者による試験導入が始まっている。治療の中に本格的にスマホアプリが組み込まれる日は近い。 

実際、薬事承認の申請を進めた治療用アプリがある。CureAppが開発したニコチン依存症治療用アプリは、600人弱のニコチン依存症患者への治験を18年末までに済ませており、今年中の薬事承認と公的医療保険適用、販売を目指し、薬事申請が認められるのを待っている状態だ。 

認められれば、禁煙外来を実施している病院から、必要に応じて薬と同じように治療用アプリが保険適用で処方されるようになる。

同社は高血圧治療用アプリとNASH(非アルコール性脂肪肝炎)治療用アプリの臨床研究も進めており、近い将来、さまざまな疾患でスマホアプリが活躍するかもしれない。 

オンラインを使った医療系サービスは確実に拡大してきた。それを利便性あるものに育てるには、制度と医療機関、患者それぞれの受け入れ態勢を整える必要があるだろう。

古田雄介(ふるた・ゆうすけ)

1977年、愛知県生まれ。建設業界と葬祭業界を経て、2002年にライターへ転身。デジタル遺品を含む終活や死生に関する調査を続ける。著書に『スマホの中身も「遺品」です』(中央公論新社)、『故人サイト』(社会評論社)など

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