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中国共産党はなぜ香港を弾圧するのか=立沢賢一(元HSBC証券会社社長、京都橘大学客員教授、実業家)
中国にとって都合の良い香港という存在
昨年6月の香港デモ発生から約1年が経ちました。
元々、中国人と香港人とはお互い非難し合い上手くいっていない、というのが一般的な見解です。
中国共産党は体質的に世界が香港市民の味方になればなるほど厳しく彼らを弾圧する傾向にあります。それは人権問題が顕在化したウイグル自治区に類似しています。
中国共産党にとっての人民は民主主義国家における国民とは異質なものです。
中国共産党は歴史的に見ても、人民を痛めつけ、それを海外諸国との交渉材料に利用するという手法を採用してきましたし、今後もそうするのです。
香港は中国にとってとても都合の良い存在です。と言うのは、海外から中国への投資は70%余りが香港経由ですし、香港経由なら米国からのハイテク商品や資金も中国に入って来れるからなのです。
香港民主化運動の行方
米国を怒らせ、中国にとってもメリットのある香港の特別地位を取り消されてしまう意味は何処にあるのでしょうか?
1つ目はあくまでも習近平の中国国内へのアピールが目的だと考えられます。
中国にとって、香港の一国二制度の息を止めるというのは香港嫌いの本土中国人への格好のアピールとなります。そして香港に対しては北京のコントロールから香港が逃げれないと言うメッセージを突き付けたのです。
2つ目は強い中国共産党が一国一制度を貫こうとする意図が考えられます。
2020年の全人代で主要目的でした香港での国家安全法が審議されました。
今回の香港デモはそれに抗議するのが目的ですが、現実的には海外からの支援がなければ香港人だけでは勝ち目がないです。香港警察だけでなく、香港警察の制服を着用した中国共産党の警察官もデモの制圧に参加しているからです。香港人は民主化運動を促し、人権を要求していますが、正にそれは中国共産党が進めようとしている政策の真逆なのです。また、ここで強硬策を講じないと将来的に台湾が独立に向かってしまう可能性が高まってしまうことも視野に入れている筈です。
3つ目は習近平が彼の実力を江沢民派のような国内の反対勢力に見せつけるという目的です。
江沢民派は上海閥や香港の華僑と親密な関係を維持し、巨額の資金を蓄えています。習近平は江沢民派の資金源を枯渇させる為に、香港を中国本土の地方都市と同様にまで落とそうと画策しているように思えます。実際に多くの中国本土の人民を着々と香港に移住させ、香港人の比率を落とそうとしています。そのような動きで民主化を訴える香港人の数を次第に減少させることを狙っているのです。蛇足ですが、昨年江沢民派であるアリババのジャックマー氏がCEOを辞任したのも中国IT最大手の騰訊控股(テンセント・ホールディングス)創業者の馬化騰氏と、パソコン最大手の聯想集団(レノボ・グループ)の創業者である柳伝志氏が、関連会社の要職から退いたのも裏で習近平の陰謀があってもおかしくないと言えるのです。
立沢賢一(たつざわ・けんいち)
元HSBC証券社長、京都橘大学客員教授。会社経営、投資コンサルタントとして活躍の傍ら、ゴルフティーチングプロ、書道家、米国宝石協会(GIA)会員など多彩な活動を続けている。投資家サロンで優秀な投資家を多数育成している。
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