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経済・企業 コロナデフレの恐怖

コロナで「カーシェアリングが終焉」し「マイカー」が復権する=野元政宏(日刊自動車新聞)

コロナでライドシェアは大打撃を受けた(Bloomberg)
コロナでライドシェアは大打撃を受けた(Bloomberg)

激変する産業地図 自動車 復権する個人所有のクルマ

 コロナ禍の前までは自動車業界のトレンドは「CASE」(コネクテッドカー・自動運転・シェアリング・電動化)と「MaaS」(移動サービスとしての乗り物)の二つのキーワードに集約され、ソフトバンクとトヨタ自動車がライドシェアに出資したり、米グーグルが自動運転に力を入れていた。しかし、これらのトレンドはコロナ禍で一変するだろう。<コロナデフレの恐怖>

(出所)筆者作成
(出所)筆者作成

 コロナの影響が真っ先に直撃したのがシェアリングサービスだ。米ウーバー・テクノロジーズや中国の滴滴出行などはタクシー会社の存在を脅かし続けてきた。しかし、不特定多数の人が相乗りするライドシェア需要はコロナの影響で急激に縮小。ウーバーなど米大手ライドシェアは従業員の解雇に乗り出している。

 レンタカーも同様で、米レンタカー大手のハーツ・グローバル・ホールディングスは連邦破産法11条を申請、経営破たんした。ライドシェアが禁止されている日本でもパーク24が手掛けるカーシェアやインバウンド需要を受け止めてきたレンタカーの需要は激減している。

 自動車を「保有」するのでなく、必要な時に借りて「利用」するという「モノからコトへ」の動きは完全に止まった。

 複数の公共交通機関やシェアリングサービスを組み合わせて移動を最適化するMaaSも、JR各社や私鉄、航空会社が参入してきたが、不特定多数の人との接触を避けることが難しいだけに先行きが見通せない状況になった。

 自動運転でも、米グーグルなどが力を入れる完全自動運転技術を使った「ロボットタクシー」は感染の懸念から需要が見込めなくなる可能性がある。一方で「個」の移動に需要がシフトすれば、高齢者や運転の苦手な人が安全に移動できる自動運転のニーズは高まる。求められる自動運転は二極化することが予想される。

 パーソナルな移動空間としての自動車のニーズがコロナで再度脚光を浴びているというわけだ。

大気改善でEV猛進

 世界各地で広がった外出自粛や都市封鎖で自動車の交通量が激減し、インドや中国などの都市部でひどかった大気汚染が劇的に改善したことで、自動車の電動化も加速するだろう。欧州自動車工業会によると主要18カ国のEV(電気自動車)の2020年1〜3月期の販売台数は、前年同期比57%増となった。コロナの影響で新車需要全体が同27%減となった中で、EVの販売は好調だった。

 仏政府はコロナの影響を受けた自動車産業の支援策の一環としてEV購入時の補助金を7000ユーロ(約80万円)に引き上げることを決定。中国もEV補助金制度の延長を決めた。こうした動きが今後、世界各国に広がる可能性がある。

 自動車各社がCASEやMaaSに注力してきたのは、米国や中国のIT大手などの異業種に主導権を握られることを懸念していたからだ。コロナ禍で消費者の意識が変化し、ライドシェアやMaaSなどの市場が縮小すると、移動に関するさまざまなデータが集まりにくくなり、IT大手の思惑とは外れることになり、既存の自動車業界にとって脅威が薄れる可能性もある。

 パーソナルな移動空間としてのクルマが本来持つ優位性をコロナ禍でどうチャンスに変えるか。自動車各社の未来の描き方がいま試されている。※本誌の内容に加筆しています。

(野元政宏・日刊自動車新聞)

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