週刊エコノミスト Online2020年の経営者

不動産投資にクラウドファンディング 岩野達志 ロードスターキャピタル社長

    Interviewer 藤枝克治(本誌編集長) Photo 蘆田 剛 東京都中央区の本社で
    Interviewer 藤枝克治(本誌編集長) Photo 蘆田 剛 東京都中央区の本社で

    不動産投資にクラウドファンディング

     Interviewer (藤枝克治・本誌編集長)

    ── 不動産投資にクラウドファンディングを活用する事業ですね。どんな仕組みですか。

    岩野 2014年に日本で初めて不動産投資に特化したクラウドファンディングを始めました。インターネット経由で不特定多数の個人からお金を集めて、資金が必要な不動産会社に貸し出し、個人はリターン(元金と利息)を受け取る仕組みです。1口1万円からと少額で投資できるのが特徴です。19年12月期現在で利用した投資家は延べ2万2895人、累積投資金額は157億円です。

    ── 投資案件はどのようなものですか。

    岩野 都内のマンション1棟、戸数10~15戸程度の物件を対象にすることが多く、1回の募集額はだいたい2億~3億円です。その物件を開発した不動産会社に、物件を担保に資金を貸します。

     利回りは年4~5%程度、運用期間は2~3年が一般的です。ネットで募集を開始すると、たいていの場合、数分で資金が集まり、受け付けが終了します。それでは不公平という声もあり、抽選で受け付ける場合もあります。

    ── 投資家はどんな人たちですか。

    岩野 30~40代の男性が多く、1回20万円くらいを投資します。背景には世界的な低金利で高い利回りを持つ投資商品への関心の高まりがあります。銀行の預金金利は低いし、かといって株式投資も株価の変動リスクがあります。むしろ1年後にきちんと投資資金が戻ることを魅力と感じる人が多いようです。スマートフォンやインターネットで、外国債券、株式といろいろな金融商品への投資が当たり前にできるようになり、不動産投資を身近に感じる人も増えています。

    ── 不動産会社はなぜお金を借りるのですか。

    岩野 中小の不動産会社は新築マンションなどを建設し、販売を完了するまでの間に、つなぎ資金を必要とします。銀行などから借りてもいいのですが、手続きが面倒だったり、審査に時間がかかったり、金利が高かったりします。我々の仕組みならより簡単に資金を調達できます。投資家にとっても、2~3年という比較的短期間で資金が個人に戻ってくるため人気があります。

    ── ですが、貸し倒れるリスクもありますよね。

    岩野 物件を担保に貸しているので、仮に不動産会社が倒産したとしても、資金は回収できます。ですから不動産の目利きが非常に重要です。私たちには不動産鑑定士、公認会計士、証券アナリスト、弁護士などさまざまなプロがいます。私も不動産鑑定士の資格を持っています。こうした評価能力の高さが他社に比べて強みだと思っています。不動産の価値を適正に評価して、なおかつ8割の掛け目を目安に融資しています。

    コロナ不況は取得の好機

    ── 新型コロナウイルスの不動産市場への影響は。

    岩野 訪日観光客の減少や外出自粛で宿泊者数が大きく落ち込んだホテルに引きずられて、国内の不動産市場は不安定になっています。入居店舗の長期的な休業で商業施設にもインパクトが大きいです。一方、賃貸マンションやオフィスビルは影響が比較的小さいですが、都内のオフィスでも賃料の減額や解約の動きが出ています。こういう状況下なので、不動産の鑑定評価を慎重にしています。

     都心のオフィスビルは1年前と比べて10~15%程度値下がりしています。ただ来年、東京五輪・パラリンピックが順調に開催されれば、ホテルの需要も戻ると思います。コロナ拡大前は、不動産を買いたい人たちが列をなして買えない状態で、今の状況はむしろ取得の機会だとみています。

    ── 個人投資家向けだけでなく、自己資金を使った不動産投資なども手掛けていますね。

    岩野 自己投資として自分たちの資金を使い、都内のオフィスビルを中心に現在24~25棟の建物を保有してます。市場で割安に放置されている物件を探して取得し、改修工事などで価値を上げて売却したりしながら投資残高を増やしています。

     20年3月末で270億円程度です。コロナウイルスの影響が予想できなかったため、今年1~3月期は取得はゼロでしたが、今後は市況を見ながら割安な物件を買いたいと思います。

    ── 不動産業界で長く仕事を続け、リーマン・ショックも経験しています。今回は何が違うと思いますか。

    岩野 リーマン・ショック当時は金融機関の破綻で融資全体の動きが止まったため、融資が直接影響する不動産業界は先行きが見えず大変でした。銀行による融資回収の動きは今のところ見られません。融資の期間も長期化しています。リーマン・ショックの時のように、不動産価格が3~4割下がるようなことはないと思います。(2020年の経営者)

    (構成=桑子かつ代・編集部)

    横顔

    Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

    A とがっていました。当時外資にいたのでよく外国人の上司とぶつかっていました。

    Q 「好きな本」は

    A 同級生の五百田達成さんの本です。きょうだい型の分析でビジネスでも参考になります。

    Q 休日の過ごし方

    A 毎週テニスです。大学生と一緒にやることもあります。


     ■人物略歴

    いわの・たつし

     1973年生まれ。開成高校卒業、96年東京大学農学部卒業、日本不動産研究所入所。2000年ゴールドマン・サックス・リアルティ・ジャパン、04年ロックポイント・マネジメントジャパンを経て、12年ロードスターキャピタル設立、社長に就任。兵庫県出身。47歳。


    事業内容:不動産対象の投資運用業、投資助言・代理業など

    本社所在地:東京都中央区

    設立:2012年3月

    資本金:14億200万円(20年3月末)

    従業員数:57人(19年12月末、連結)

    業績(19年12月期、連結)

     売上高:151億円

     営業利益:36億円

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