経済・企業2020年の経営者

建設現場の足場を半世紀ぶり刷新 高宮一雅 タカミヤ会長兼社長

    Photo 平岡仁:大阪市北区の本社で
    Photo 平岡仁:大阪市北区の本社で

    建設現場の足場を半世紀ぶり刷新

     Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)

    ── 建設現場の足場をレンタルする会社ですね。足場で大きな変化が起きているとか。

    高宮 建設現場で使用される資材の多くはレンタルで賄われています。そのなかで当社は、建物の外壁に沿って設営する作業用の足場を中心に事業を展開しています。従来の足場の高さは170センチが標準で、半世紀変わっていませんでした。しかし、その高さでは、多くの人がかがんで作業せざるを得ません。中腰で作業するのはつらいし、腰痛の原因にもなる。

     そこで高さ190センチの次世代足場「Iqシステム」を2013年に導入しました。しかし、当初は社内外から猛反対を受けました。

    ── なぜですか。

    高宮 パイプや床材を組み立ててつくる今の足場は、バブル経済の建設ラッシュのときに一気に増えました。しかしバブル崩壊後、景気が落ち込み、公共工事も減って足場需要は急減しました。一方、足場は鋼材でできていて、20年、30年たっても強度はほとんど変わらず使い続けられます。需要減でレンタル料は安くなりましたが、この業界は簿価がほぼゼロになった足場を安値で貸し出して、辛うじて利益を得るような状態が長年続いていたのです。

     ですから、新たにコストをかけて作った次世代足場を提供しようと私が言ったとき、「今より高い値段で足場を借りてくれる現場なんかない」と社内は猛反対でした。加えて、工事現場でも「足場を組み立てる鳶(とび)職の人たちが、慣れていないものを使うのは嫌がる」と導入に否定的でした。

    ── それでどうしたのですか。

    高宮 一度使ってもらえれば、良さが分かってもらえる、元には戻れないはずだ、と私は確信していました。そこで、高い値段で貸す必要はない、今までと同じ値段でいいから使ってくれと。また設営も自分たちでやりますと言って、作業部隊を作りました。それなら現場はコストも上がらず、リスクも負いません。「そこまで言うなら」と使ってくれるところが徐々に増えました。

    ── そこから一気に普及した。

    高宮 そもそも戦後に170センチの足場が導入された頃、日本人男性の平均身長は160センチ強でした。当時は地下足袋で、ヘルメットもかぶっていません。今は平均身長が170センチ超になり、厚底の安全靴を履いて、ヘルメットをかぶります。170センチでは9割の人が頭が当たる。190センチなら1割程度です。

     最近の工事現場では、次世代足場じゃないと「今日は外れの現場だな」と作業員の人たちがぼやくほど浸透しています。人手不足のなか、従来の足場だと人が集めにくいからと、注文が増え続け、供給が間に合わない状態です。

    管理職は「結婚が条件」

    ── 高層マンションなどでは、足場ではなく外壁に沿って作業場がエレベーターのように上下する昇降機を提供しています。

    高宮 スペインの会社から「リフトクライマー」と呼ばれる昇降機を10年前に導入しました。約200メートルの高さに対応できます。ここ数年、初期のタワーマンションが大規模修繕の時期を迎えており、需要が伸びています。従来は屋上からつり下げたゴンドラを使って作業することが多かったのですが、風に弱いという欠点があります。足場では15階ぐらいが限度なので、タワーマンションでは低層階が足場、高層階がリフトクライマーという使われ方もしています。

    ── 農業用のビニールハウスにも力を入れていますね。

    高宮 もともとパイプを曲げたり、溶接するのは得意で、どのくらいの風に耐えられるかの強度計算もできる。台風で飛ばされたビニールハウスを再建できていない農家が多くあり、お手伝いしています。ただ、私たちがさらに目指しているのは、強度も高さもある鉄骨ハウスでITを活用して生産管理できる農業を広げることです。

    ── 管理職になるには結婚していることが条件とか。

    高宮 管理職は約200人いますが、ほとんどが既婚者です。日本の最大の問題は少子高齢化。うちの社員には早く結婚して、家庭を大事にしてほしいと思っています。34歳未満で結婚したら月3万〜5万円、子供が生まれたら1人につき月3万〜5万円を支給しています。結婚記念日は必ず2日休暇を取れるようにしています。家庭を持つと責任感も強くなるし、家族と真剣に向き合うと、部下のことも考えるようになります。

    ── でも独身者でも優秀な人はいますよね。

    高宮 そういう人はエキスパート職として処遇しています。離婚したら、管理職から外れることになっていますが、ここ十数年離婚者は出ていません。当社のこうした慣習は入社するときにきちんと説明しています。私も家内に「離婚したら社長をクビになるから、頼むからやめてくれ」と言っています(笑)。(2020年の経営者)

    横顔

    Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

    A 20代終わりから営業のトップを務めていましたが、バブルが崩壊して状況は厳しかった。今振り返れば、会社を存続させることに精いっぱいで、本当に社員を大切にできたか、反省点が多いです。

    Q 「私を変えた本」は

    A 織田信長を描いた本をたくさん読みました。どう攻めるか、協力するかなど、戦略を学びました。

    Q 休日の過ごし方

    A 家で料理したり、夫婦で買い物にいったり、ゴルフしたりですね。


     ■人物略歴

    たかみや・かずまさ

     1966年生まれ。85年大阪浪商学園高校卒業。92年エスアールジータカミヤ(現タカミヤ)入社。95年取締役ビルドテクノレンタル事業部長、97年常務、2000年副社長、02年社長、17年から会長を兼務。大阪府出身。53歳。


    事業内容:建設資材のレンタル、製造、販売など

    本社所在地:大阪市北区

    設立:1969年

    資本金:10億5000万円

    従業員数:1298人(2020年3月末、連結)

    業績(19年3月期)

     売上高:421億8200万円

     営業利益:27億1300万円

    インタビュー

    週刊エコノミスト最新号のご案内

    週刊エコノミスト最新号

    12月15日号

    税務調査 コロナでも容赦なし!16 コロナ「中断」から再開 効率化で申告漏れ次々指摘 ■種市 房子19 元国税局芸人に聞く! さんきゅう倉田「手ぶらでは調査から帰らない」23 国税の「最強部隊」 「資料調査課」の実態に迫る ■佐藤 弘幸24 「やりすぎ」注意! 死亡直前の相続税対策に相次ぎ「待った」 [目次を見る]

    デジタル紙面ビューアーで読む

    おすすめ情報

    最新の注目記事