週刊エコノミスト Online2020年の経営者

大画面テレビ向けのコンテンツを強化 米倉英一 スカパーJSATホールディングス社長

 Interviewer 藤枝 克治(本紙編集長) Photo 中村 琢磨:東京都港区の本社で
Interviewer 藤枝 克治(本紙編集長) Photo 中村 琢磨:東京都港区の本社で

大画面テレビ向けのコンテンツを強化

 Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)

── 衛星放送「スカパー!」の加入件数は減少が続いています。どう対応しますか。

米倉 長期間加入しているコアな視聴者層が高齢化し、一方で若い世代がテレビを見なくなっていることが加入者減の大きな要因です。ただし、加入件数320万件のうち、コアなユーザーは200万件いるので、ここを減らさないように付加価値の高いサービスを提供していくつもりです。

── 2019年度はプロ野球の放送を充実させました。

米倉 20年度も同じ方針で、12球団全試合を中継できるようにしていきます。また、福岡ソフトバンクホークスについては、2軍戦を含めて全試合を中継します。

── 一方で、サッカーはネット配信のダゾーンがJリーグの放映権を獲得するなど積極的で、スカパー!は苦戦しているのでは。

米倉 Jリーグのリーグ戦はダゾーンが放送していますが、われわれも国内カップ戦や海外リーグ戦は放映していきます。特にドイツのブンデスリーガはスカパー!でなければ見られません。特徴のある放送にしたいと思います。

── ドラマや映画についても、ネット配信など競合が多くなっています。どう差別化しますか。

米倉 テレビが高精細の4Kや8K放送の時代になると、リビングの大画面テレビで美しい映像を楽しむようになる。ここでネット配信とは差別化できると思います。ネット動画より大画面テレビで、スカパー!で見たほうが良いコンテンツをそろえていきます。

── とはいえ、若い世代では自宅にテレビがなくパソコンやスマートフォン(スマホ)で動画を見る人が多い。

米倉 若い世代も結婚して子供ができるとライフスタイルが変わって、テレビを買う流れがあります。やはりテレビはなくならないと思っていて、リビングルームには大画面のテレビがあって、何かの時に家族が集まってみんなで見る。そういう場面を描いたTVコマーシャルを流しています。そのためのコンテンツをいかに増やすかが課題です。

 もちろん、スマホやパソコンなど多様な端末に対応する「スカパー!オンデマンド」というサービスもあります。こうした端末向けサービスはドラマや映画ではなく、音楽やスポーツのライブ中継で強みを発揮すると思います。

衛星は解析事業に進出

 スカパーJSATホールディングスは、スカパー!を手掛けるスカイパーフェクト・コミュニケーションズと、通信衛星を運用するJSATが07年に経営統合して誕生した。スカパー!と並び、衛星の事業も大きな柱となっている。

── 衛星事業のほうがスカパー!事業より利益は大きい。現在の状況は。

米倉 2月に1基打ち上げて、現在20基保有しています。1基は高度2000キロメートル以下の低軌道の衛星で、あとの19基には高度3万6000キロメートルの静止軌道上の衛星です。利益は安定しています。

── どのようなビジネスモデルですか。

米倉 静止軌道衛星は通信や放送に使用され、使用料が入ります。例えば、2月に打ち上げた衛星はNTTドコモがバックアップ用に使用します。日本は光ファイバー網が張りめぐらされていますが、台風や地震などの自然災害で寸断されることがあります。そうした非常時に衛星通信を用います。

 次の展開として、低軌道衛星が撮影する地表の画像やそこから得られるデータを活用するビジネスも考えています。例えば、石油タンクには原油の上に落とし蓋(ぶた)を浮かせる浮き屋根式があり、この浮き屋根の影の長さの変化から貯蔵量が解析できます。衛星から屋根を撮影したデータを石油の需要予測に用いることができます。

── 解析技術はどのように。

米倉 低軌道衛星による画像解析サービスを手掛ける米国のオービタル・インサイト社とプラネット・ラボ社に出資し、日本の代理店も務めています。両社の衛星画像解析データを日本の顧客に提供しています。

 また低軌道衛星が地球の裏側で撮影したデータを迅速に送信するために中継衛星を経由させる構想があり、仏エアバス社と共同で展開する覚書を結んでいます。

── スカパー!と衛星では事業内容が大きく異なります。社内の壁やあつれきはありませんか。

米倉 セクショナリズムをなくす努力をしています。人材をあえて組織横断的に異動させ、例えば、現在スカパー!事業のトップは衛星事業出身者が務めています。JAXA(宇宙航空研究開発機構)との共同事業では、国際宇宙ステーションにスタジオを開設し、映像配信する計画ですが、衛星事業だけをやっていたら出てこない発想で、シナジー(相乗効果)が発揮されていると思います。(2020年の経営者)

(構成=村田晋一郎・編集部)

横顔

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 発電所や送電線など社会インフラ系の事業に携わっていました。米国駐在も長く、米国で空洞化している産業を狙っていました。

Q 「好きな本」は

A 現代史ものが好きで、最近ではユヴァル・ノア・ハラリの『サピエンス全史』や『21 Lessons』です。頭の整理に役立ちます。

Q 休日の過ごし方

A 食事や音楽、ドライブなど幅広く楽しんでいます。スポーツ観戦も好きです。


 ■人物略歴

よねくら・えいいち

 1957年生まれ、私立暁星高校卒業、81年慶応義塾大学経済学部卒業後、伊藤忠商事入社。2011年常務執行役員、伊藤忠インターナショナル会社社長(CEO)。伊藤忠商事代表取締役常務執行役員などを経て、18年6月スカパーJSATホールディングス代表取締役副社長。19年代表取締役社長に就任、現在に至る。東京都出身。62歳。


事業内容:有料多チャンネル衛星放送および通信衛星サービス

本社所在地:東京都港区

設立:2007年4月

資本金:100億円

従業員数:864人(2019年3月現在、連結)

業績(19年3月期、連結)

 営業収益:1640億1400万円

 営業利益:152億9000万円

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