【週刊エコノミスト創刊100年キャンペーン実施中】いまなら週刊エコノミストオンラインをお申し込みから3カ月間無料でお読みいただけます!

週刊エコノミスト Online2020年の経営者

編集長インタビュー 鈴木孝二 エン・ジャパン社長

Interviewer 藤枝 克治(本紙編集長) Photo 武市 公孝:東京都新宿区の本社で
Interviewer 藤枝 克治(本紙編集長) Photo 武市 公孝:東京都新宿区の本社で

求職者目線で活躍できる転職を

 Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)

── 転職支援サイトの「エン転職」が好調です。

鈴木 登録会員数は800万人を超え、2019年は年間で90万人増えました。人手不足は深刻で、企業がいくら雇用を延長しても、団塊の世代の退職は進み、若年層の労働人口は100万人を切っています。また、人の寿命は延びていますが、ビジネスのサイクルは速くなり、企業の寿命は短くなっています。好むと好まざるとにかかわらず、転職は促進されます。今後は従来のように景気が良ければ転職数が伸び、減退すればしぼむという景気の影響を受けにくくなるでしょう。

── 売り上げ、利益とも右肩上がりで推移してきましたが、20年3月期の業績予想を下方修正しました。

鈴木 市場の要因ではなく、目標をやや高く設定し過ぎたためです。ただ、転職支援の市場は、価格競争が激しくなっています。他社は同じ料金で掲載期間を延ばしたり、定価から2〜3割の値引きをするところもあるようですが、当社は値引きには追随していません。それよりサービスの質を上げていくことが大切です。企業からすれば、いくら掲載料が安くても採用に至らなければ意味がありません。転職市場の規模や採用ニーズが大きく減らない限り、料金は競争力の本質ではありません。

異例の試み

── では他の転職サイトと質はどう違うのですか。

鈴木 徹底して求職者に必要とされるサービスを提供しています。サイトに掲載する企業情報は、当社の担当者が取材して執筆しています。担当者は名前と顔写真を掲載します。当初は社内から猛反対されましたが、責任を持って情報を提供するために導入を決めました。臨場感ある情報を提供するため、職場の様子も動画で撮影します。また入社してから辞めずに活躍してもらうことが大切なので、あえて「仕事の厳しさ」や、その仕事に「向いていない人」はどういう人か、なども掲載しています。

── 口コミ情報にも力を入れていまね。

鈴木 11年には口コミサイト「カイシャの評判」を立ち上げ、社員や元社員が日々感じている生の声をそのまま掲載しています。誹謗(ひぼう)中傷を除いて掲載企業のネガティブな投稿もそのまま掲載しており、求人広告業界では異例の試みです。広告料を支払うのは企業側ですから、企業が喜ぶ情報を提供しておけば、短期的には売り上げが上がるかもしれません。

 しかし当社は求職者が入社後に活躍できる転職を目指しており、より実態に合った情報を提供すると決めています。求職者は職場の実態を知りたいのです。多少耳の痛いことを書かれていても応募してくる求職者なら、採用に至る確率も高いです。入社後も期待と現実のギャップが少なくなり、離職率も下がります。その結果、企業が満足する好循環が生まれます。

── エン転職とは別に、企業が採用用のホームページを自力で作成できるサービス「エンゲージ」にも注力しています。

鈴木 求職者がエン転職で入社したい企業を見つけても、その企業のホームページを見ると何年も更新されていないページが表示されたり、スマホ対応していないなど、企業が追いついていない実態がありました。実際、エン転職の掲載記事と企業のホームページの雰囲気が全く異なるので応募をやめたという声もありました。

 そこで企業が採用ページを更新する煩わしさを軽減するための仕組みを作り、全国25万社以上で導入されています。従来のような掲載料ではなく、応募者数に応じて課金する形にしています。成功報酬型ですから、企業はリスクがほとんどありません。

── ベトナムなど海外にも展開しています。

鈴木 13年にベトナム最大の求人サイトと人材紹介を手掛ける企業を買収しました。求人サイトシェアの8割近くを持っており、転職市場は年々大きくなっています。日本で提供している入社後に活躍できるノウハウと、離職率を減らすサービスを定着させたいです。また日本では企業が社員教育を行いますが、ベトナムは社員が自分で負担して、スキルやノウハウを習得しています。求職者にスキル教育を行い転職支援を展開していきます。

── 働き方改革が進むなか、人材採用は今後どう変化しますか。

鈴木 変化を積極的に受け入れ、雇用制度や働き方を多様化している企業は伸びています。一方で従来通りのやり方のまま、人が足りないと言い続けている企業は競争力を失っています。労働人口が減って人材の引き合いが激化すれば、いい人から辞めていくでしょう。採用のみならず入社後の活躍と定着が、経営課題の根幹になっています。採用は人事の問題ではなく、企業において最も重要な戦略になると思います。

(構成=吉脇丈志・編集部)(2020年の経営者)

横顔

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 14人でエン・ジャパンを立ち上げた直後で、激動の急成長期でした。記憶がないぐらい働きましたが、やりがいがありました。

Q 「好きな本」は

A 三枝匡の『V字回復の経営』です。不振に陥った事業を立て直した際のバイブルでした。

Q 休日の過ごし方

A 料理です。スーパーに買い物に行って家族に振る舞い、食器も洗います。


 ■人物略歴

すずき・たかつぐ

 1971年生まれ。今治西高校、同志社大学商学部卒業。同年エン・ジャパンの前身である日本ブレーンセンター入社。2000年同社のデジタルメディア事業部が分社独立、エン・ジャパン設立と同時に取締役就任。08年6月から現職。愛媛県出身。49歳。


事業内容:人材採用、人材紹介、社員研修事業など

本社所在地:東京都新宿区

設立:2000年1月

資本金:11億9499万円

従業員数:3351人(19年3月現在、連結)

業績(19年3月期、連結)

 売上高:487億3300万円

 経常利益:118億3400万円

インタビュー

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

10月18日号

EV&電池世界戦16 米中欧のEV覇権争いと戦略なき日本の危機 ■野辺 継男18 蓄電池は21世紀の石油 ニーズこそ進化を促す20 インタビュー 只信一生 電池サプライチェーン協議会会長、パナソニックエナジー社長 「蓄電インフラ整備こそ日本の課題」21 米国先制 17州が35年に「脱ガソリン車」 ■ [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事