週刊エコノミスト Online2020年の経営者

ドーナツのコラボ商品を積極展開 山村輝治 ダスキン社長

Interviewer 藤枝 克治(本紙編集長) Photo 中村 琢磨:東京都新宿区の東京地域本部で
Interviewer 藤枝 克治(本紙編集長) Photo 中村 琢磨:東京都新宿区の東京地域本部で

ドーナツのコラボ商品を積極展開

 Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)

── ダスキンが運営するドーナツチェーン「ミスタードーナツ」は今年、日本で50周年だそうですが、最近は苦戦気味という印象です。

山村 ミスタードーナツの主な客層は、子ども2人に両親という4人家族が中心でした。しかし、少子高齢化やスイーツの多様化が進みました。加えてコンビニエンスストアがスイーツを充実させて、お客さまの選択肢が増えたことも苦戦の理由です。

 加えて、二十数年間続けていた「100円セール」を4年前にやめました。対象のドーナツを100円で提供するセールで、かつては年1回だったのが、次第に回数が増え、月1回、月2回と日常的になってしまった。それをやめることに、加盟店からは集客や売り上げが落ちると反対が多かったのですが、ドーナツがおいしいからではなく、安いから来店するという状況は良くないと思い、決断しました。セールをやめてから3年間は、ドーナツ事業はマイナス成長で苦しかったですね。

── どんな手を打ったのでしょうか。

山村 まず、さまざまなコラボ(協業)商品を始めました。「misdo meets(ミスド・ミーツ)」と題して、他ブランドやその道のプロに協力してもらう取り組みです。最近では世界的パティシエのピエール・エルメ氏と共同開発したドーナツを1月から期間限定で発売しました。

 また、パスタなどの食事系メニューを強化し、朝食や昼食として利用してもらう「ミスドゴハン」も始めました。パスタはパスタ店を展開するピエトロにソースを監修してもらった本格メニューです。

 こうした取り組みがだんだん認知されるようになり、2019年10〜12月のドーナツ事業は前年同期比5~6%のプラスになりました。今では100円セールを復活させてほしいという加盟店はなくなっています。

── 一方で、一時は約1300店あった店舗の統廃合や改装も進めています。

山村 採算が悪い店を閉め、店舗数は19年3月末現在1005店です。以前は約30坪の広さで席数は32席程度、キッチンを備えるのが標準で、出来たてのドーナツを提供していました。今は立地に応じて柔軟に店舗展開しています。例えば、キッチンがない店舗にして座席数を増やしたり、コストを抑えたりし、その代わりドーナツは近隣のキッチンがある店舗から届けるようにしました。また狭いスペースで座席がない持ち帰り専門店も出店しています。持ち帰り専門店は、通勤途中に買えるように東京や大阪の駅ナカを中心に増やしていきます。

家事代行サービスが増加

── メイン事業である、モップやマットなど掃除用具のレンタルの状況は?

山村 業務用と家庭用があり、業務用はマットのレンタルが中心で、売り上げは横ばいで推移しています。働き方改革で従業員にあまり残業をさせられないため、掃除の負担を減らしたいという需要が結構あります。一方、家庭用は単身世帯が増えて、日中は仕事で家にいないことが多く、訪問してモップなどのレンタル商品を交換することが難しい。そうしたお客さまには郵送で交換できるサービスを始めています。しかし、都市部のセキュリティーの高いマンションでは営業が難しく、地方も過疎化が進んで世帯数が減っています。家庭用は厳しい事業環境ですね。

── 掃除用具のレンタルだけでなく、掃除代行のサービスも行っています。

山村 高齢者が家事をできなくなったり、忙しい家庭では掃除をする時間もなくなっています。しかし、自分では掃除をしなくても、家の中はきれいにしておきたいので、誰かに掃除してほしいというニーズはあります。このため、家事代行サービス「メリーメイド」は現在、需要に供給が追い付かず、依頼のすべてに対応できていない状況です。

── どんな人の利用が多いのですか。

山村 以前は富裕層が中心でしたが、今は共働き世帯の利用が多くなっています。自分たちの時間を買う感覚で、掃除してもらう時間を趣味や子供と出かけるなど、別のことに使っているようです。定期的な利用者の場合は、家の鍵を預かり、不在時に掃除することもあります。

── 他人に鍵を預けることに抵抗はないのですか。

山村 そこは、ダスキンというブランドが信用されているのだと思います。

 掃除以外でも、洗濯、片付け、アイロンがけや、プロの技術と専用機材を用いるエアコンの掃除や害虫駆除などのサービスも提供しています。こうした需要は今後も増えていくと思います。

(構成=村田晋一郎・編集部)(2020年の経営者)

横顔

Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

A 新規事業を立ち上げ、無から生み出す仕事の大変さを経験しました。上司も厳しかったですが、その人のお陰で今の私があると思っています。

Q 「好きな本」は

A ダスキン創業者の鈴木清一氏の『われ損の道をゆく』です。今でも読み返すことがあります。

Q 休日の過ごし方

A 朝1時間、10キロのジョギングをします。他には買い物など家族と過ごすことが多いです。


 ■人物略歴

やまむら・てるじ

 1957年生まれ、私立興國高校卒業、79年大阪体育大学卒業後、小学校教員を経て、82年ダスキン入社。2004年取締役クリーンサービス事業本部副本部長、07年取締役ケアサービス事業本部、レントオール事業部、ホームインステッド事業部担当などを経て09年4月から現職。大阪府出身、63歳。


事業内容:清掃用資器材の賃貸、家事代行サービス、ドーナツの製造・販売および飲食物の販売など

本社所在地:大阪府吹田市

設立:1963年2月

資本金:113億円

従業員数:3813人(2019年3月末現在、連結)

業績(19年3月期、連結)

 売上高:1586億9900万円

 営業利益:79億5400万円

インタビュー

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

4月30日・5月7日合併号

崖っぷち中国14 今年は3%成長も。コロナ失政と産業高度化に失敗した習近平■柯隆17 米中スマホ競争 アップル販売24%減 ファーウェイがシェア逆転■高口康太18 習近平体制 「経済司令塔」不在の危うさ 側近は忖度と忠誠合戦に終始■斎藤尚登20 国潮熱 コスメやスマホの国産品販売増 排外主義を強め「 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事