週刊エコノミスト Online2020年の経営者

中古戸建ての改築で新たな価値を 新井健資 カチタス社長

    Interviewer 藤枝 克治(本紙編集長) Photo 武市公孝:東京都中央区の東京本部で
    Interviewer 藤枝 克治(本紙編集長) Photo 武市公孝:東京都中央区の東京本部で

    中古戸建ての改築で新たな価値を

     Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)

    ── 中古住宅をリフォームして販売する会社ですね。特徴は何ですか。

    新井 地方都市の空き家を中心に一戸建て住宅を買い取り、リフォームという価値を足して、新築の半額ぐらいで提供しています。マンションのリフォーム販売を手がける会社は多数ありますが、戸建ての住宅では業界ナンバーワンの存在だと自負しています。

    ── 客層は。

    新井 30代から50代で、初めて住宅を買う人たちです。子供が生まれ、手狭なアパートではなく、子供をのびのび育てたいという人が全体の半数を占めます。世帯年収は200万円から500万円程度が多い。

     販売価格は平均1400万円ぐらいです。我々のチラシなどを見て、住宅ローンを組んでも、月々の家賃よりも安いか、同じくらいの支払いで家を買えると気づいて購入してくれます。

    他社にない目利き力

    ── 空き家をどのように再生するのですか。

    新井 マンションのリフォームと違い、まず、屋根や外壁など外回りが大切です。また、都心の物件は駅からの距離で価値が決まりますが、地方都市では公共交通機関が十分ではありません。そのため、駐車場の有無が決定的に重要です。共働きの世帯が多いので、最低2台、来客を考えると3台以上とめられる方がいい。内部は壁紙を全部交換し、キッチンやバス・トイレも原則としては全部取り換えます。内部は新築と同じようにきれいだねと思われるようにしています。

    ── 同業他社にない強みはどこですか?

    新井 空き家は全国で年に数十万戸も出ています。ですから物件を仕入れる際、「どうやって買うか」ではなく、「いかに買わないか」が重要です。もし問題がある物件を買ってしまうと、売るに売れなかったり、リフォームに多額の費用がかかってしまい、大きな損失が出ます。築30年の空き家でもきちんと見て、住めると判断する“目利き力”は他社にはなかなかまねできないと思います。そのうえで、どうリフォームすればお客様に喜んでもらえるか、といった企画力が重要になります。リフォームを何百戸と経験した優秀な社員がそれを担っています。

     また、構造上、建物が大丈夫か、リフォームの費用がどれくらいかかるかを、カチタスだけでなく、大工さんやシロアリ調査会社を交えた「三者立ち会い」による検査をします。カチタス以外の2者の視点によって、リスクを見極めています。非常に面倒な作業ですが、ここまで入念にやる会社はないでしょう。

    ── 新井さんは12年にリクルートから事業立て直しのために、カチタスの社長に就任しました。何から取り組みましたか。

    新井 当時は販売する物件の質が悪くなっていました。景気後退で業績が悪化してコストカットに走り、リフォーム費用を削った。そのため中途半端な家がたくさんできてしまったのです。そこで、商品力のアップにお金をかけることにしました。また良い人材を採用しようと正社員採用にも力を入れました。テレビ会議も導入しました。会社の方針が伝言ゲームではなくて、全員に伝わるように変えました。

     また、かつては物件の仕入れは競売が中心だったのですが、だんだん競売の値段が上がったのと、競売物件は家の明け渡しに時間がかかって効率が悪いので、一般の買い取り中心に仕入れを変えました。

    ── 地方の大学生を積極的に採用しているそうですね。

    新井 当初は東京で採用し、地方に配属していましたが、うまくいきませんでした。見ず知らずの地方での仕事はやはり大変です。一方で、最近は自分が生まれ育った地域に空き家が増え、問題意識を持っている学生が増えています。自分の仕事が地域活性化につながるという思いがあればそれは仕事に生きます。地方の優秀な学生を採用して、その地域で働いてもらっています。

    ── 戸建てのリフォーム販売は地域の活性化につながると。

    新井 草がぼうぼうに生えてしまっていた空き家を一戸変えて人が住むようになると、その周辺や地域の住民が一番に喜びます。日本の空き家問題はこれから一層深刻になります。我々は小さなレベルではありますが、役に立てると感じています。

    ── 空き家が増えると事業機会も増えます。今後の成長戦略は。

    新井 焦って急拡大しないようにすることが大事だと思っています。会社の成長に人材の育成が追いついていかないと、販売物件の質が低下して2~3年後には必ずクレームの嵐になります。有望なマーケットですが、コントロールしながら持続的に成長していきたいです。

    (構成=神崎修一・編集部)(2020年の経営者)

    横顔

    Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

    A 31歳まで政治家の秘書を務めた後、コンサルティング会社のベイン・アンド・カンパニーでビジネスのスキルなどを身につけました。

    Q 「好きな本」は

    A 大前研一さんの本を大学生のころ生協で手に取り、衝撃を受けました。それ以来、大前さんの本をすべて読んでいます。

    Q 休日の過ごし方は

    A スキーやスノーボードです。冬の間は、新潟県内のスキー場に毎週のように通っています。


     ■人物略歴

     あらい・かつとし

     1968年生まれ。都立国立高校、東京大学法学部卒業。93年三和銀行(現三菱UFJ銀行)入行。国会議員秘書、ベイン・アンド・カンパニー・ジャパン・インク、リクルート(現リクルートホールディングス)を経て、2012年にやすらぎ(現カチタス)に入社し、現職。東京都出身。51歳。


    事業内容:中古住宅再生事業

    本社所在地:群馬県桐生市

    設立:1978年9月

    資本金:37億7887万円

    従業員数:715人(2019年3月現在、連結)

    業績(19年3月期、連結)

     売上高:813億5600万円

     営業利益:91億400万円

    インタビュー

    週刊エコノミスト最新号のご案内

    週刊エコノミスト最新号

    7月27日・8月3日合併号

    変わる! 相続&登記・民法18 日本中の相続・不動産取引を変える法改正のインパクト ■種市 房子20 相続<1>土地・建物…うっかりで大損!? 登記しないと金銭的制裁も ■横山 宗祐22 <2>ますます登記が大事! やらなきゃ「法定相続分だけ」に ■横山 宗祐23 <3>遺産分割も遅れると大変! 相 [目次を見る]

    デジタル紙面ビューアーで読む

    おすすめ情報

    最新の注目記事