教養・歴史

スナック菓子から食事の代わりに 伊藤秀二 カルビー社長

    Interviewer 藤枝 克治(本紙編集長) Photo 武市 公孝:東京都千代田区の本社で
    Interviewer 藤枝 克治(本紙編集長) Photo 武市 公孝:東京都千代田区の本社で

    スナック菓子から食事の代わりに

     Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)

    ── 新型コロナウイルスが猛威を振るっています。どのように対応していますか。

    伊藤 感染防止のために従業員の出社はやむを得ない場合だけにして厳格に運用しています。工場には私も含め訪問を控えるなど細心の注意を払っています。

     今のところジャガイモなど国産の原材料の入荷には問題ありません。海外でも食品製造工場は生活に必要なものとして止められていません。ただし、今後は状況によって原材料への影響など長期的なリスクとして考えなくてはならないと思います。

    ── 主力商品のポテトチップスの市場は。

    伊藤 市場は微増が続いています。原料のジャガイモは小麦や米と比較して食物繊維が多く、ビタミンCも入っていて、主食として有効な食材です。日本人のジャガイモの年間食用量は1人当たり27〜28キロですが、米国は2倍、欧州は3倍です。日本はもっと増える可能性があります。日本ではポテトチップスはお菓子として普及しましたが、本来は食品に近いのです。塩分も当社のポテトチップスは1袋当たり0・5グラムしか使っておらず、パン1斤と同程度です。

    ── 今年2月にはポテトチップスの新商品「シンポテト」を発売しました。

    伊藤 シンポテトは「カルビー最薄」をうたっていて、薄くて小さく、軽い食感が特徴です。若い女性を主なターゲットにしています。薄くても油っぽさがでないように、従来のパーム油ではなくひまわり油で揚げているのもポイントです。

    ── スナック菓子に次ぐ事業の第2の柱として朝食向けの穀物食品、シリアルに力を入れています。

    伊藤 1988年にシリアル事業を開始し、コーンフレークから始めました。コーン系で朝食の市場を拡大するのは難しかったのですが、オーツ麦などを主とした加工品にフルーツを組み合わせたグラノーラを発売して伸びました。同時期にヨーグルトの消費が拡大し、一緒に食べる動きが広がったことも追い風でした。

    ── 日本人はごはんとみそ汁、あるいはパンの朝食が多いですが、どう取り込みますか。

    伊藤 家で簡単に食べられる商品を提供すれば市場は広がります。シリアルは1食当たりの単価も、他の食品に比べれば安いです。

     ちょっと関連する話として、2019年に人気スナック菓子「じゃがりこ」にお湯をかけると、やわらかいポテトサラダみたいになる「じゃが湯りこ」という商品を出しました。従来のお菓子のイメージや中身を少し変えることで、カップスープのような副食になっていく可能性は高いと思います。

    サツマイモにも進出

    ── サツマイモ販売の「ポテトかいつか」(茨城県かすみがうら市)を138億円で買収すると今年2月に発表しました。狙いは。

    伊藤 サツマイモはジャガイモと似ています。当社の契約農家の中で茨城、千葉、宮崎、鹿児島の人たちは同時にサツマイモも作っている人がたくさんいます。アジアではスイーツの材料としてのイメージもあります。日本の農産物の輸出を考えると、大きなチャンスがあります。

    ── 20年3月期連結の業績予想を2月に修正し、売上高を30億円引き下げて2550億円としました。理由は。

    伊藤 国内事業は計画通りですが、海外は北米事業が思ったように進みませんでした。米国では、さや豆を原料とするスナック菓子「ハーベストスナップス」を長く販売していますが、工場での作り方に課題があった。オーガニック豆を使った新商品でアピールする計画でしたが、対応が遅れました。豆の他の新製品も出しましたが、ヒットには至っていません。大型小売店のコストコとウォルマートでの取り扱いが伸び悩んだことが影響しました。

    ── 中期経営計画で24年3月期の売上高目標3100億円を掲げ、20年3月期見込み2550億円から大きな伸びを目指しています。

    伊藤 海外の比率を大きくしています。現在の海外売上高400億円を800億円に増やす計画です。日本は少子高齢化などで極端な成長は見込めません。海外をどう伸ばすかがカギです。北米の他に、成長率では中国に期待しています。特にフルグラが人気で、シリアル市場は急成長しています。フルグラはもともとは中国からの訪日観光客の間で火が付き、ブームになりました。

     インドネシアは進出して4年目ですが、ポテトチップスで15%以上のシェアを既に獲得しており、今後の成長性も高いと思います。タイにも生産拠点があります。ポテトチップスの品質は7割が原料で決まります。生産者と一緒になって取り組まないとできません。原料が悪ければどう逆立ちしてもよいものはできなくなります。(2020年の経営者)

    (構成=桑子かつ代・編集部)

    横顔

    Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

    A 大阪でシリアルを売る専門部隊のリーダーをやっていました。

    Q 「好きな本」は

    A ジェフリー・ムーアの『ライフサイクル イノベーション』です。40代後半に読みました。商品の成長期、成熟期、衰退期に適切な施策を打てば成熟も衰退もしないといったことが書かれています。

    Q 休日の過ごし方

    A ランニングです。基本的には毎週10キロくらい。18年はハーフマラソンにもチャレンジしました。


     ■人物略歴

    いとう・しゅうじ

     1957年生まれ。法政大学経営学部卒業、79年カルビー入社、2001年執行役員、04年取締役執行役員、05年取締役常務執行役員。09年6月社長兼COO(最高執行責任者)。18年6月から社長兼CEO(最高経営責任者)。福島県出身、63歳。


    事業内容:菓子・食品の製造・販売

    本社所在地:東京都千代田区

    設立:1949年4月

    資本金:120億4400万円

    従業員数:3763人(2019年3月末、連結)

    業績(19年3月期、連結)

     売上高:2486億円

     経常利益:274億円

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