経済・企業2020年の経営者

店舗維持し「逆張り」で向き合う 南昌宏 りそなホールディングス社長

    Photo 武市公孝:東京都江東区の本社で
    Photo 武市公孝:東京都江東区の本社で

    店舗維持し「逆張り」で向き合う

     Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)

    ── 4月1日にりそなホールディングス(HD)の社長に就任しました。どのような金融機関を目指しますか。

    南 「リテール(個人と中小企業向け)の金融サービスはりそな」と言ってもらえるトップブランドを目指します。そのため二兎(にと)を追っていきます。

     まずは、りそなの強みを見直します。取引のある口座数は個人で約1600万、法人で約50万あります。りそなは銀行業務だけでなく、顧客の財産管理を行う「信託」も取り扱っています。商業銀行としては国内最大の規模です。この顧客基盤と信託機能を掛け合わせれば、高齢化が進む中で、次の世代に事業や資産を引き継ぐための大きな武器になります。もう一つは新しいビジネスを創造することです。社会課題や顧客ニーズは多様化しており、顧客が抱えている問題に向き合い、いかに解決策を提供できるかが鍵になります。

    ── メガバンクは店舗の統廃合を進めています。全国約840の店舗網はどうしますか。

    南 メガバンクの合理化は一つの戦略ですが、目と目を見て話をすることはリテール分野では価値が大きいと思っています。逆張りになりますが、店舗網は可能な限り維持します。ただ、そのままの形で残すわけではありません。銀行の店舗は370坪(約1200平方メートル)ぐらいの広さがあり、結構な大きさです。そのため店舗の小規模化や再配置は行います。借りている物件なら、賃料などコストを抑えることができます。

     一方で、グループの近畿大阪銀行と関西アーバン銀行が統合した関西みらい銀行は、隣同士にそれぞれの店舗が立っている場所もあります。そのため、ある程度拠点数は減ることになります。

    ── 店舗のあり方は。

    南 (法人と個人のすべての顧客を対象にした)フルバンキングの店舗と、相談業務を中心とした店舗を組み合わせることで、顧客との接点は維持します。そのために業務手順を変え、システムを簡素化することが必要です。コストを削減しながら、しっかりと地域との関係を持ち続けること。それが我々の生き方だといえます。

    ── コンビニのATM(現金自動受払機)の利用が増えています。店舗や街中にあるATMはどうしますか。

    南 キャッシュレス化の流れで、既存のATMでの取引数が減っていることは間違いありません。ATMは1台の価格も高い。今は1店舗に6、7台あるので、ここは縮小していきます。提携するJR東日本が駅構内に置くATM「ビューアルッテ」も利用できるなど、利便性は広がっており、店舗外のATMについても全体のネットワークの中で台数を見直します。

    異業種と連携も視野に

    ── 南社長は、スマートフォン向けアプリの開発などネットと店舗を組み合わせるオムニチャネル戦略を担当してきました。

    南 アプリは今すぐ、この場でも簡単にインストールできますよ。すでに銀行の基本機能は入っており、顧客が希望する時に取引できます。口座残高や入出金明細の確認、振り込みなどさまざまな取引がスマホで完結します。我々は約100万人の顧客とは直接話す機会を得ていますが、残りの1000万人以上の顧客に対しては、これまで積極的に働きかけるのは難しかった。アプリで双方向でつながることができれば、こちらから新しい提案もできます。スマホだけでは完結しにくい、住宅ローンや相続などの相談に乗るきっかけづくりにつながります。

    ── 東和浩会長(前社長)はHDとりそな銀行のトップを兼ねていました。今年度からは南社長がHD、りそな銀行は岩永省一社長、埼玉りそな銀行は福岡聡社長と、3人の新社長が役割を分担します。南社長の役割は何ですか。

    南 「化学反応」を起こしたいと思います。現在のビジネスモデルを強くするのは銀行側が中心となります。HDは新しい金融のあり方を見つめ直し、組織横断的なチームを作ります。公募もして、能力のある人材を集めます。オムニチャネルは、ある程度の方向性が見えています。我々が持つ機能と、異業種も含めた外部の企業が持つ機能をつなげて、顧客課題を解決できるサービスをゼロベースで考えて提供していきます。

    ── メガバンクは海外へ盛んに進出しています。積極的に進出する考えはありますか?

    南 今のところは考えていません。日本から東南アジアに出る中堅・中小企業をサポートするのが役目で、メガバンクとは役割が少し異なります。我々が基盤とする首都圏や関西圏は人口や産業が集中しており、世界的にみても有望な市場で、機動的に顧客に寄り添えるかが非常に重要です。

     新型コロナウイルスが流行し、影響が大きくなっています。金融面で我々が手伝えることもあるはずです。(2020年の経営者)

    (構成=神崎修一・編集部)

    横顔

    Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

    A 本部の企画部門で、公的資金の注入や経営計画の策定などに関わりました。忙しかったですね。

    Q 「好きな本」は

    A ITビジネスを描いた『アフターデジタル』など最近はデジタル関係の本をよく読んでいます。

    Q 休日の過ごし方

    A 車を運転して遠くに出かけて、目的地で散歩することが楽しみです。


     ■人物略歴

    みなみ・まさひろ

     1965年生まれ。和歌山県立海南高校、関西学院大学商学部卒業後、89年埼玉銀行(現・りそなHD)入社。2013年4月りそなHDグループ戦略部長、17年4月執行役、19年6月取締役、20年4月から社長。和歌山県出身、54歳。


    事業内容:銀行・信託・クレジットカード業務など

    本社所在地:東京都江東区

    設立:2001年12月

    資本金:504億7200万円

    従業員数:2万1600人(19年3月末、連結)

    業績(19年3月期、連結)

     経常収益:8607億600万円

     経常利益:2030億1800万円

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