週刊エコノミスト Online 住まい
「中国人が所有」は誤り? データで見た「タワマン」の真実=編集部
湾岸エリアのタワーマンション1棟まるごと登記簿を調査、驚くべき真実が判明!
不動産鑑定会社の三友システムアプレイザル(東京都千代田区)は、東京の湾岸エリアのタワーマンション1棟について、全戸の不動産登記簿を取得し、所有者や所有形態、売買動向などに関する詳細な調査を行った。タワマンは一般には、値上がり益を狙った中国などの外国人の保有比率が高いと見られているが、今回の調査では外国人の所有率は1割にとどまり、大半は日本人が保有していることが判明した。また、各戸の売買頻度も0~1回が大半を占め、転売目的ではなく、実際に生活するために購入されていることが分かった。東京カンテイの市場調査部上席主任研究員の井出武氏は「販売後のタワマンの実態についての情報は今までなかった。大変興味深い」と語る。
今回の調査対象となったのは、東京都江東区東雲に建つ「アップルタワー東京キャナルコート」。44階建てだが、戸数が440戸と調査には手ごろな規模のうえ、建築年も2008年のリーマン・ショック前の07年で、所有者の長期的な動向がつかめることが期待できるため、対象に選ばれた。
調査によると、全440戸のうち、日本人の名義は約390戸で全体の9割弱を占めた(図1)。外国人は約40戸と全体の1割弱で、残りの10戸、4%程度が法人名義だった。平均所有年数は、日本人が7・1年、外国人が5・1年、法人が1・6年だった(図2)。当初所有者では外国人は10階台が多く(16戸)、39階以上の高層階は3戸と少なかった。
各戸の売買頻度は、事前予想ほどは高くなく、全体の約6割、258戸が売買回数ゼロだった。借り入れ状況は当初所有者440戸のうち、借り入れなしが89戸(2割)で、借り入れありが351戸(8割)だった。当初所有者と中途所有者を含めた件数ベースで、借入先はSMBC、三菱UFJ、みずほの3メガバンク系が1~3位だった。
07年の竣工時から各年の売買戸数を見ると、08年のリーマン・ショックの翌年の09年と、東京五輪の開催決定の時期が多く、築10年を経たタイミングでの売却もあったとみられる。(図4)。
(編集部)
(本誌初出 「タワマン」丸ごと調査 所有は日本人9割、外国人1割 リーマンと築10年契機に売買増加=編集部 2020・6・16)