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企業が地域住民を支配する?「スーパーシティ法案」の恐るべき正体=立沢賢一(元HSBC証券会社社長、京都橘大学客員教授、実業家)
なぜニュースは重要な問題を報道しないのか
日本では国民が1つのニュースや事件に目を奪われている隙に、どさくさ紛れで議論に時間が掛かる法案を通してしまったり、政治家の恥部が明るみにならないように隠蔽される事例が多々あります。この手法は日本政府の常套手段です。
東日本大震災時には、消費増税、TPP参加の議論が加速していました。
2019年の西日本豪雨の最中、重要なインフラである水道を民営化するための改正水道法が可決されていました。
新型コロナショック時、種苗法改正案や検察庁法改正案を政府が国会で成立させようとしていたのですが、柴咲コウさんなどの芸能人や影響力ある人達のSNSを使った反対運動に配慮した形で政府は先送りを余儀なくされました。
佐々木希の旦那さんでアンジャッシュ渡部さんの不倫問題が世の中を騒がせている間、親中派自民党二階幹事長の要請を受けて1-2月にかけて東京都備蓄用防護服の中国へ無償寄贈、学歴詐称、特定ベンチャー企業との癒着、特定PR会社への高額支出などたくさんのスキャンダルを抱えた小池知事は、7月の都知事選に向けて、二階幹事長という権力者の力添えを得て、自分への批判の矛先を逸らすことに成功したのかも知れません。
「スーパーシティ法案」の問題点
そうした疑いをもたれそうな案件が直近でもうひとつありました。
石田純一さんの新型コロナ感染ニュースで一色の最中、4/16にスーパーシティ法案が衆議院本会議で可決しました。
また参議院では、多くの芸能人も参加しSNSにおいて反対運動が盛り上がった検察庁法改正案を隠れ蓑にするかのように、5/27にスーパーシティ法案が可決しています。つまり、別の法案を取り上げてそれが炎上している内に、本命の法案を通過させる技とも考えられるのです。
スーパーシティとは、内閣府が20年3月に公表した構想案によりますと、
(1)「移動、物流、支払い、行政、医療・介護、教育、エネルギー・水、環境・ゴミ、防犯、防災・安全の10領域のうち少なくとも5領域以上をカバーし、生活全般にまたがること」、
(2)「2030年頃に実現される未来社会での生活を加速実現すること」、
(3)「住民が参画し、住民目線でより良い未来社会の実現がなされるようネットワークを最大限に利用すること」
という3要素を満たす都市と定義されています。
簡単に申し上げれば、AIやビッグデータを活用し、自動運転やキャッシュレス、行政手続きの簡易化や遠隔医療・教育など、生活全般をスマート化する「丸ごと未来都市」のことです。
ポイントは、中央政府ではなく、ミニ独立政府がスーパーシティを管理、運営していくという事です。
注目すべきなのは、そのミニ独立政府の構成員が国家戦略特区担当大臣、市町村の首長、そして「企業及び企業のビジネスと深い関わりのある関係者」であるとされています。ですから、もしかするとスーパーシティの住民より企業利益が優先されるような管理、運営になるのではないかと危惧されているのです。
中国モデルを日本で導入?利便性向上の行末
既に北京、上海、杭州でスーパーシティが創造され、始動しています。米中覇権戦争の渦中にも拘らず、世界一進化している中国と日本は2019年8月30日、地方創生に関する協力を強化する覚書を交わしました。これにより、日本は最先端技術の実証実験を街全体で行うスーパーシティの整備に向け、先行する中国と連携を強化することで、実現性を高めることを狙ったのです。
「世界で一番ビジネスをしやすい環境を作る」という目的を達成するために、地域ごと、分野ごとに分けて税制優遇付き規制フリー地域を国内の随所に作るという国家戦略特別区域法が2014年12月から施行されましたが、スーパーシティ法はその国家戦略特区法の改正案なのです。
便利さが増す一方で、国や自治体、警察、病院、企業が、今は別々に所持している個人情報( 例えば、納税の状態や既往症、位置・移動情報や商品の購買歴といった個人情報 )の垣根が壊され、AIによる一元化が進みます。そしてそれにより日本が超監視社会に変化してしまうリスクが高まっているのです。更に、そのデータを中国が管理できるような仕組みになれば、日本の国家安全保障問題にまで進展してしまう事にもなり兼ねません。
スーパーシティ導入によるメリットも勿論あるでしょうから、賛否両論はありうると思います。ただ、この法案によって私達が居住する環境がどのように変化するのかを議論をし尽くしていると言えるでしょうか?そして私達はその変化によりどのようなデメリットが発生するのかを事前に認識できるのでしょうか?
新型コロナショック発生以降、私達は自分の生命の保全は政府や企業に委ねるのではなく、自己責任で行わなければいけない時代に突入したと自覚しなければいけません。さもなければ、私達はこの時代の変化から取り残されてしまうのです。
立沢賢一(たつざわ・けんいち)
元HSBC証券社長、京都橘大学客員教授。会社経営、投資コンサルタントとして活躍の傍ら、ゴルフティーチングプロ、書道家、米国宝石協会(GIA)会員など多彩な活動を続けている。投資家サロンで優秀な投資家を多数育成している。
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