経済・企業 新社長に聞く
コロナでデジタルの弱さを痛感した三菱UFJ信託銀行の新社長=浜條元保・編集部
4月に就任した三菱UFJ信託銀行の長島巌社長にコロナ禍への対応、浮かび上がった弱点、経営方針を聞いた。
-- コロナ禍での社長就任となりました。どんな意気込みで臨みますか。
■人類は感染症を何度も経験してきた。淡々といくしかないと思っている。社会インフラとして途切れずに、きちんと当社のサービスを提供していきたい。お客さまや社員とその家族の健康に留意しながらやっていく。
本社機能の見直しで30社の相談を受けている
-- コロナによってテレワークが普及し、本社機能を見直す動きがあります。オフィスに関する総合コンサルティング機能を持つ三菱UFJ信託銀行に相談は増えていますか。
■我々の注力分野でもあり、積極的に営業活動をする中で、現時点で30社程度からご相談を受けている。ただ、ニーズはさまざまだ。本社機能をなくそうという企業がある一方で、やはりみんなで集まろうという企業もある。どちらが正しいかは、わからない。お客さまとよく対話をしながら、サポートしていきたい。
-- 2008年のリーマン・ショックとコロナ危機の違いは何ですか。
■リーマン・ショックは金融危機だった。今回は金融は大丈夫。ここが一番の違い。リーマン・ショックは金融危機が発生したことで、全産業に影響が出た。今回は、特定の業種に影響が集中している。具体的には、ホテルや小売業といった業種だ。気をつけないといけないのは、長期化して全体の消費マインドを冷え込ませてしまうことだ。小売りや観光業から自動車などの耐久財へと、巡り巡って需要を落ち込ませてしまうリスクがある。ここから金融危機につなげてはいけない。
テレワークに対応できなかった本社
-- コロナ禍は、各社が独自に持つ構造問題をより鮮明にしたように思います。三菱UFJ信託銀行にとって、今回浮かび上がった構造問題とは何ですか。
■ITが弱いことだ。デジタル化が遅れていることを痛感させられた。テレワークをしようにも、本社のサーバーにアクセスできないという問題が発生した。外部アクセスできるようにIT環境の整備を急ぎたい。
-- コロナ後の事業展開を考えるうえで、キーワードは何ですか。
■コロナがあってもなくても、株主資本主義の見直しだろう。株主はもちろん大事だが、国連のSDGs(持続可能な開発目標)や社会、従業員などほかのステークホルダー(利害関係者)のことをもっと考えなくてはいけない。コロナ前から米国でも、そういう動きがあった。危機の局面で、社会インフラとして銀行が多少だが、評価された。そうした社会使命をしっかり果たしていきたい。もう一つ、これは私の個人的な意見だが、自然との共生が求められていくように思う。コロナ感染も結局、気候変動だったり、自然を破壊しすぎたということが遠因にあるのだろう。地球にやさしい、持続可能な社会を目指していかないといけない。(聞き手浜條元保・編集部)
(社長のプロフィール)
ながしま いわお 1963年3月生まれ。85年4月三菱信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)入社。2019年4月副社長を経て20年4月から現職。