経済・企業

テラスハウス問題など不祥事多発、経営悪化……迷走するフジメディアHDの戦犯は誰か

株主総会は、52分の「シャンシャン」で終わった
株主総会は、52分の「シャンシャン」で終わった

 フジ・メディア・ホールディングス(フジテレビの持ち株会社、フジメHD)の経営が迷走している。かつては、年間視聴率で盤石の民放1位を誇ったが、2011年にトップの座を譲ってからは、順位は低下し続け、この5年間は4位が定位置となっている。業績もさえない。民放キー局5社の20年3月期連結決算はいずれも前期比営業減益だが、中でも、フジメHDは、売上高が5・6%減の6314億円、営業利益は24・1%減の263億円と不調が目立つ。

 不祥事も相次いでいる。まず、フジテレビの番組「テラスハウス」に出演していた女子プロレスラー木村花さんがネット上の誹謗(ひぼう)中傷で自死した事件。原因は番組上の演出に問題があったとして、番組は打ち切りに追い込まれた。

 次に、グループ会社・産経新聞の記者2人は朝日新聞社員とともに、コロナ禍による自粛期間中に東京高検の黒川弘務・前検事長と賭けマージャンに興じていたことが発覚。取材対象である公権力との癒着だという批判を受けた。

 そして、フジ系列局と産経の合同世論調査で、調査業務を委託していた企業の再委託先が14回にわたって電話をかけず架空の回答を入力していたことが判明した。不正なサンプルは約2500件、総調査件数の約17%になったという。

 三つの不祥事はメディアとしての社会的責任が問われる問題だっただけに、6月に行われたフジメHDの株主総会で経営側がどう説明するのか注目された。しかし、会場に集まった株主からの質問は1人1問、質問時間は2分、しかも質問内容は会社の経営に関することに制限され、経営陣が十分な説明義務を果たさないまま、総会はわずか52分でなかば強制的に閉会された。会場で質問した株主は「電通は不祥事だらけだが、質問制限していない」と声を荒らげたという。

「院政」への懸念

 関係者の間では、1988年にフジテレビ社長に就任し、長年トップを務めてきた日枝久・取締役相談役(17年6月から現職)が“院政”を敷いていることが、フジメHDの企業統治不全を招き、業績低迷や不祥事の一因になっているのでは、との指摘が出ている。

 元フジテレビ報道局解説委員の安倍宏行氏はフジ凋落(ちょうらく)の原因をオピニオンサイト「iRONNA」で、報道の自由が不可欠な「現場への上層部の介入」と分析している。同氏が入社した92年当時は活気があったが、今は上をおもんぱかる風土が蔓延(まんえん)しているという。フジメHDは、編集部の取材に対し、「業務執行は代表取締役を中心に取締役会の決議を経て遂行されております。取締役相談役は、その知見・経験を生かした経営上のアドバイスなどを行う職責を果たしております。当社においてはいわゆる院政のような問題は存在しておりません」と説明する。

 企業統治に詳しい山口利昭弁護士は、「今回の一連の問題は、いずれも外からの指摘で判明したが、グループ企業や利害関係者の法令順守への配慮等、自律的な予防策を講じてこなかったのではないか。問題が発覚しても、組織としての構造的な問題にまで原因究明を行うことを怠っていた可能性がある」と分析。さらに、「テレビ放送は免許事業であり、事業の清廉性、無謬(むびゅう)性が強く求められる組織だ」としたうえで、「関係者の処分で終わらず、自らをただすガバナンスが求められている」と強調する。

(編集部)

(本誌初出 迷走する経営 不祥事相次ぐフジメHD 背景に企業統治不全の声=編集部 20200818)

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