安倍前首相の親戚で土光臨調以来の財界キーパーソン、ウシオ電機創業者牛尾治朗氏がひっそりと第一線から引退した理由
ウシオ電機創業者の牛尾治朗氏(89)が5月に代表取締役会長を退いたのに続き、9月10日付で取締役相談役を退任し、名誉相談役となった。
ウシオ電機は半導体製造向け露光用光源や映像機器を手掛けるが、牛尾氏は社外での活動で存在感を発揮してきた。松下幸之助氏や土光敏夫氏の薫陶を受け、経済同友会代表幹事をはじめ財界要職を歴任。小泉純一郎政権では経済財政諮問会議員を務めるなど、政界への影響力も強かった。特に牛尾氏の長女が安倍晋三前首相の兄の妻であることから、前首相とは姻戚関係にある。近年は表立った動きは少なかったが、首相動静で会食が報じられるなど、親族の立場から安倍政権を支えてきた。
一方で、牛尾氏が1979年に社長から会長に就任した後、ウシオ電機では現在の内藤宏治氏まで社長は4人。その間も牛尾氏は実質的な最高経営責任者であり続け、「社長が牛尾氏よりも前に出ることははばかられる雰囲気があった」(業界関係者)。力がありすぎたゆえに自社の世代交代は遅れたと言える。
ウシオ電機は今回の取締役退任について「体力の低下を理由に本人が申し出た」としている。くしくも長きにわたった安倍政権と同じタイミングで牛尾氏も一線から退くことになった。
(本誌初出 安倍政権終焉と連動 牛尾氏が一線退く 20201006)