経済・企業挑戦者2020

井出有希 シェアダイン共同代表 おうちの料理もプロにおまかせ

撮影 武市公孝
撮影 武市公孝

 食物アレルギーや生活習慣病が増える現代は、一般家庭でも食の専門知識が必要になる。その解決手段の一つとして、食の専門家と悩みをもつ家庭を結ぶ場を提供する。

(聞き手=藤枝克治・本誌編集長、構成=白鳥達哉・編集部)

さまざまなシェフ、プランが用意されている シェアダインのホームページより
さまざまなシェフ、プランが用意されている シェアダインのホームページより

 料理のプロであるシェフが、一般家庭を訪れて利用者の希望に沿って献立を提案し、料理を作ってくれる、訪問料理のマッチングサイトを運営しています。

 シェアダイン登録シェフは現在約800人います。管理栄養士や栄養士、調理師など国家資格を持っている人が多く在籍しています。また、栄養士なら病院、保育園、給食センター、調理師ならレストランなど、第一線での経験のある人がそろっています。

 利用者は、サイトに表示されるシェフやプランの一覧から、目的や料理の内容、訪問日程などで、好みに合うものを選択します。シェフごとに専門分野や職歴が表記されており、簡単に候補を絞り込むことが可能です。

 独自の特徴として、事前に献立の希望についてチャットで相談ができます。それに対して、シェフから「こういったメニューはどうか」などの提案がくることもあります。

 その後はシェフの訪問を待つだけ。あらかじめ食材を用意しておく必要がありますが、必要なものをシェフに買ってきてもらうこともできます。調理中は何をするのも自由。鍵を預けて仕事に行く利用者や、横で見ながら作り方を教わる利用者もいます。

 1回の訪問料金はシェフごとに違いますが、だいたい1万円前後。作る料理の量は12品程度、家族4人なら4日間分くらいになるので、1食当たりのコストも高くありません。

主婦の悩みが起業の種に

 私は、会社員だったころに子どもを出産したのですが、大きな悩みが食事作りでした。子どものことを考え、バランスのいい食事を作ってはみるものの、緑色の野菜やひき肉などをまったく食べてくれない。仕事をしながらという状況は思った以上に大変で、離乳食など必要に応じた料理の知識を得るための時間も取れず、悪戦苦闘する日々が続きました。

 このときに感じたのが、「専門的な知識がある調理師に気軽に相談したり、代わりに料理を作ってもらえるようなサービスがあったらいいのにな」ということです。しかし、当時はそのような便利なサービスはなかったので、周りにいる同じ立場の女性とランチをしながら、子どものご飯をどうしているのかについて聞くくらいしかできませんでした。

 そんなとき、同じ悩みを抱えていた共同代表の飯田から、問題を解決するためのサービスをビジネスにしたいと相談されました。

 起業は、それまで考えたこともありませんでしたが、同じ悩みを持つ人たちにとっての助けになるのならばと、思い切って挑戦しました。システムの開発やシェフの募集など、どれも手探りの状態で苦労しましたが、周りの助けも借りながら、なんとか2018年5月にサービスを開始しました。

 現在の利用者は76%が未就学児の子どもをもつ世帯ですが、美容やダイエット、糖尿病などの生活習慣病対策、筋トレなどを専門とするシェフも登録するようになり、これまでに少なかった単身や高齢者の層も開拓できています。

 とはいえ、まだ訪問料理サービスはメジャーな存在ではありません。今後は、このサービスが一般家庭に当たり前の選択肢となる世界を作っていきたいです。(挑戦者2020)


企業概要

事業内容:料理代行マッチングプラットフォームの運営・管理

本社所在地:東京都港区

設立:2017年5月

資本金:1.2億円

従業員数:10人


 ■人物略歴

いで・ゆき

 1978年高知県生まれ。東京大学経済学部卒業後、ゴールドマン・サックス証券に入社。その後、アライアンス・バーンスタイン、ボストン・コンサルティングを経て、2017年に共同代表の飯田陽狩(いいだ・ひかり)と共にシェアダインを創業。42歳。

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