美容に効くのは腸内細菌だけじゃない! 肌の常在菌を管理するアプリとサプリが人気の理由
病気になるのを防ぐ「予防医療」として近年注目の腸内細菌。美容を入り口に、菌ケアを推進しようとするユニークな会社がKINSだ。
(聞き手=加藤結花・編集部)
腸の環境を整える22種類の乳酸菌と、乳酸菌のエサとなる食物繊維などを成分とした「KINSサプリメント」を主に自社のインターネットサイトで販売しています。腸内細菌を整えることで、にきびや乾燥肌の改善などの効果が期待できます。そして、サプリを売って終わりではなく、生活習慣を含めて健康・美容のためのパートナーとしてお客様と伴走するというのが当社の特徴です。
そのために大切なのが経過観察。まずは、サプリの摂取を始める前に肌の状態を調べるため、皮膚常在菌の数を検査をします。皮膚常在菌のバランスが崩れていると、肌のバリア機能が低下し肌トラブルを引き起こす原因となるからです。生活習慣や肌の状態、体調の変化などに関するアンケートを毎月実施し、回答を踏まえ、菌の配合率や種類の違う3種類(年内にもう1種類追加予定)のサプリの中から最適なものを提案しています。
私はもともと約10年、歯科医師として勤務し、30歳からは歯科以外に皮膚科、消化器内科があるクリニックで理事長職に就いていました。そこにはアトピー性皮膚炎や慢性的な腹痛など、これまでなかなか症状が改善しなかった患者さんが来院されていましたが、患者さんの多くに共通していたのが腸内細菌のバランスの乱れでした。血液検査をして不足する菌を補うサプリを処方すると、症状が目に見えてよくなる。参加していたドクター勉強会の中でも、たびたび菌の重要性が指摘されており、全身の健康に菌が大きくかかわっていることを実感しました。その経験から事業として菌の力を広めていきたいとの思いが強まり、自己資金2000万円で起業しました。
睡眠やアレルギーの改善も
腸内環境を整えるメリットは美肌効果だけではありません。アレルギーが良くなった、睡眠の質が向上したという具合に人によってはいくつもの効果が表れます。菌は、ピンポイントに効果が出る薬と違い、効果をダイレクトに実感しづらい面もありますが、恩恵は多岐にわたります。ですから菌のケアを行うことは病気になるのを防ぐ予防医療の観点から非常に重要なのです。
ただし、「予防医療は大切です」と言っても病院にかかるほどの症状が出ていない人に努力を促すことは難しい。菌ケアによる予防医療の大切さを伝えるための「入り口」として始めたのがニーズの高い美容を目的とするサービスでした。狙い通り、KINSは美容意識の高い女性から支持され、利用者の約7割が30代の女性です。今秋以降は、皮膚常在菌のバランス改善に効果のある美容液やクレンジングなどを新たにラインアップに加え、商品を充実させる予定です。美容目的で菌ケアを始めてもらい、生活習慣の改善も含め結果的に健康になり、予防医療につなげようとしています。菌ケアで病気になる人を減らしたいというのが私の願いです。
皮膚常在菌に関する3000人以上のデータや毎月のアンケートの回答など、菌と健康・美容に関する貴重なデータもそろってきているので、これらを活用してヘルスケアを担うサービスとして事業を成長させていきたいです。(挑戦者2020)
(本誌初出 下川穣 KINS代表 「菌ケア」で美容・予防 20200915)
企業概要
事業内容:美肌・生活習慣病の予防に効果的なサプリメント、スキンケア商品の販売など
本社所在地:東京都目黒区
設立:2018年12月
資本金:1億2472万円(資本準備金含む)
従業員数:12人(アルバイト含む)
■人物略歴
しもかわ・ゆたか
1985年福岡県出身。岡山大学歯学部卒業。福岡、東京で歯科医師として約10年間勤務した後、2018年12月にKINSを設立。19年10月に主力製品であるサプリメントの販売をサタートさせた。今秋以降に化粧品、来年以降には歯ブラシや歯磨き粉などの口腔ケアグッズの販売も計画している。