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経済・企業 挑戦者2020

「いつでもどこでもかわいい猫ちゃんと一緒にいたい……」スマホの「猫様見まもりアプリ」が注目を集めるワケ

撮影 武市公孝
撮影 武市公孝

 猫への深い愛情と、学生時代に取り組んだ動物の生態研究の知見によって生まれたのが、猫の遠隔見守りサービスだ。

(聞き手=藤枝克治・本誌編集長、構成=加藤結花・編集部)

 家で留守番をしている愛猫が何をして過ごしているのか知りたい──。猫を飼っている多くの人にとっての関心事は、仕事などで不在にしている間に、愛猫がどんな様子で過ごしているかということです。

 私自身が20年以上猫と暮らす「愛猫家」で、私や社員の多くは猫を愛を込めて「猫様」と呼びます。その“猫愛”と大学時代にカメラやセンサーなどの計測器で野生動物の生態を調査するバイオロギング研究に従事していた経験が結びついて、猫様の見守りサービス「Catlog(キャトログ)」を開発しました。

首輪型デバイス(手前)とデータを受信しサーバーに送信する中継機器
首輪型デバイス(手前)とデータを受信しサーバーに送信する中継機器

 キャトログは加速度センサーを搭載する首輪型のウエアラブル端末で、猫様の行動データを24時間取得し、収集したデータをクラウド上で解析。スマートフォンのアプリで睡眠時間や食事回数などの情報を表示します。

 センサーで検知できる行動は「食べる」「寝る」「くつろぐ」「歩く」「走る」「毛づくろい」の6種類。日々の行動データを蓄積できるので、普段とは違う行動の変化に気付きやすくなり、健康管理にも活用できます。実際に、体調不良の猫様を病院で診察してもらうときに獣医さんに見せるユーザーさんもいるようで、獣医さんからもキャトログに関する問い合わせがあります。

 猫様の行動をもっと詳細に記録できるよう、「水を飲む」「吐く」「ジャンプ」の行動パターンについても検知できるよう開発中です。特に、吐くという行為は猫様にとって病気の症状として注意した方がよく、改良によって、有用性が高まると期待しています。

 現在、キャトログで記録している猫様は約2500匹に上ります。猫様専用で行動分類まで行うウエアラブル端末は世界初。行動データは非常に貴重です。動物の医療分野の研究を行うアニコム先進医療研究所(東京都新宿区)と、将来的に特定の疾病の予兆を検知・予防できるよう共同研究も進めています。

「猫の日」に創業

 猫様だけでなく、子どもの頃から虫も含め大の動物好きで、文鳥やハムスター、蚕などを飼っていました。

 動物好きが高じて、大学・大学院時代はペンギンやオオミズナギドリの生態を研究しました。オオミズナギドリの調査では、岩手県の無人島に泊まり込んで、深度センサーや高度計を使って調べていました。

 研究者の道に進むか迷いましたが、リクルートに採用が決まり入社を決めました。営業や企画、広報の仕事など10年程度経験しましたが、研究対象が動物から人間に変化しただけで、対象を観察し、仮説を立てて検証するアプローチの方法はあまり変わらないように思いました。もちろん、企画を実現するために人を説得したり、大きなお金を動かした経験は、起業する上で非常に勉強になりました。

 満を持して、2018年2月22日に起業しました。その日を選んだのは「222」が語呂合わせで“にゃんにゃんにゃん”となる「猫の日」だからです。19年の9月にサービスを始めることができました。人と暮らす猫は約6億匹ともいわれ、私のような愛猫家は世界中にいます。そして、猫の生態は万国共通。将来的なグローバルな事業展開も含めて、いろいろできることがありそうです。(挑戦者2020)

(本誌初出 伊豫愉芸子 RABO代表 センサーで「猫様」見守る 20200804)


企業概要

事業内容:猫の行動を記録計で観測して、アプリで健康管理や見守りができるCatlog(キャトログ)サービス

本社所在地:東京都渋谷区

設立:2018年2月22日

資本金:非公開

従業員数:9人


 ■人物略歴

いよ・ゆきこ

 1981年東京都出身。東京海洋大大学院博士前期課程修了後、リクルートに入社。約10年勤務し、企画や新規事業開発を担当。2018年2月22日(猫の日)にRABOを創業。ショートヘアソマリのブリ丸(写真)とベンガルのおでんと暮らす。

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