投資・運用挑戦者2020

土屋清美 STOCK POINT代表取締役 ポイント運用で投資を気軽に

撮影 武市公孝
撮影 武市公孝

 貯蓄から投資へのシフトが進まない日本。ポイントで投資するサービスを通じて、投資をもっと身近な存在に。

(聞き手=藤枝克治・本誌編集長、構成=吉脇丈志・編集部)(挑戦者2020)

新サービスでは変動情報が一目でわかるなど見やすさを重視した STOCK POINT提供
新サービスでは変動情報が一目でわかるなど見やすさを重視した STOCK POINT提供

 クレジットカードなどにたまるポイントを、株式などの運用商品に投資できるサービスを提供しています。投資した株価に連動して日々のポイント残高が動く仕組みです。

 クレディセゾンの永久不滅ポイント、MIカード、ドットマネー、ポンタポイントなどのポイントを当社が発行する「ストックポイント」に交換して運用します。1ポイントは1円相当で、2020年6月時点でユーザー数は約12万人、約1億4000万ポイントを預かって運用しています。投資できる対象は、株式や投資信託、ビットコインなど200種類を超えました。投資に興味が出てきたら、ためたポイントで本物の株式を購入することもできます。

 7月1日から大和証券グループと提携し、より利便性を重視した「ストックポイント・フォー・コネクト」を立ち上げました。アプリをダウンロードすれば、SNSのアカウント登録を行うだけで使えて、口座開設や本人確認などの情報入力は一切不要です。また年齢制限がないので、子供でも気軽に体験することができます。株式への交換手数料や銘柄を売買する手数料は無料にしています。

 健康寿命が延びる中、みんなお金を増やす努力が必要だと知りながらも、日本では貯蓄から投資へのシフトがなかなか進みません。もっと投資を身近にするためには、足かせになっている投資へのハードルを下げる必要があります。買い物をしたあとについてくる「おまけ」のポイントであれば投資しやすく親しみやすいと考え、ポイントを使って気軽に株や投資信託に投資ができるサービスを作りました。ユーザーの3分の1は投資や運用を全くやったことのない初心者です。

個人と企業をつなぐ

 大学卒業後は研究者として光半導体の研究をしていましたが、毎日同じ実験を繰り返すことが私の性格には合いませんでした。電通国際情報サービスに入り、金融システムの経験を積んだ後、金融機関向けに投資システムや運用管理のツールを提供する会社の立ち上げに加わりました。規制緩和で銀行、証券、保険の垣根がなくなるなかで、金融機関向けのツールよりも、もっと消費者寄りのサービスが展開できないかと考えるようになり、STOCK POINTの起業に至りました。

 今後は多くの企業と組んで、ポイント運用を軸にいろいろなサービスを立ち上げたいと思っています。例えばいつも飲むビールが決まっている人がその商品を買いつづけると、そのビールメーカーのポイントがたまっていくような仕組みを構想しています。一定のポイントがたまれば株式に交換できるので、実際の株主になることで、その企業をもっと応援できるわけです。ポイントの発行原資は企業が負担していますが、それが必ずしも企業に還元されてはいません。コンビニの買い物などで使われて終わってしまうのが現状です。将来的には、個人の日常生活での消費行動を通じて、企業への投資につなげていく仕組みができないか考えています。

 ポイントが株価に連動する仕組みは、日本と米国で特許を取得しています。他社にはまねできない強みを生かして、海外にも進出していきたいです。


企業概要

事業内容:株価連動型ポイント運用システムの開発・運用

本社所在地:東京都千代田区

設立:2016年9月

資本金:1億6823万円

従業員数:10人


 ■人物略歴

つちや・きよみ

 1960年生まれ。東京都出身。女子学院高校、東京工業大学理学部卒業。電通国際情報サービス、金融機関向けベンチャーを経て、2006年Sound-F(現Sound-FinTech)を設立。16年9月にSTOCK POINTを設立。60歳。

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