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テクノロジー挑戦者2020

増木大己 マモリオ代表 大事なもの「なくす」をなくす

撮影 武市公孝
撮影 武市公孝

 大事なものをなくさないための小型タグを開発。認知症の高齢者の見守りやマーケティングなど、活用領域も広がっている。

(聞き手=藤枝克治・本誌編集長、構成=岡田英・編集部)

置き忘れても地最後にあった場所が地図上に表示される
置き忘れても地最後にあった場所が地図上に表示される

「なくす」をなくす──。これを実現しようと開発したのが、紛失防止タグ「MAMORIO(マモリオ)」です。財布や鍵、かばんなど大切なものに付け、専用アプリを入れたスマートフォンと近距離無線通信ブルートゥースで接続しておきます。タグが周囲20~30メートルに届く電波を出しており、手元を離れて電波をキャッチできなくなると、通知がスマホに届きます。アプリを開けば、地図上に置き忘れた場所が表示されます。

「みんなで探す」という機能もあります。手元から離れたマモリオが発する電波を、通りかかった他の利用者のスマホが検知し、落とし主に検知場所を自動通知します。アプリを入れたスマホは、マモリオの発する電波をすべて受信できるいわば「基地局」。知らないうちに利用者みんなで探しているイメージです。互いの情報は知られません。実際、自転車を盗まれたが、マモリオの利用者が通りかかって通知が届き、見つかった例もあります。

 利用者が増えるほど、見つかりやすくなる。でも、どう増やすか。考えた末にできたもう一つの機能が、駅や商業施設の忘れ物センターに届くと落とし主に通知する機能です。鉄道会社などにかけあってセンターに専用受信機を設置してもらい、マモリオが付いた落とし物が届くとすぐ検知する仕組みです。スマホ自体を忘れた場合でも、メールで通知され、パソコンなどで場所を確認できます。

 大きさは縦3.5センチ、横1.9センチ、重さは3グラム。電池は1年以上持ち、価格は2480円(税抜き)。利用者は数十万人で、紛失の可能性の通知後に手元に戻った復帰率は99.8%です。

高齢者の見守りにも

 きっかけは、証券会社でベンチャー企業の新規上場支援をしていた頃、先輩が業務用のタブレットをなくしたことでした。対応に追われる姿を見て、「こういう時に役立つサービスがなぜないのか」と思ったんです。

 その頃、誘われて参加した起業家養成合宿で落とし物の情報サイトを作る案を発表したところ、出資してくれるベンチャーキャピタルが現れ、2012年に起業。米国での先行事例も参考にして試行錯誤を重ね、現在のようなタグを15年11月に製品化しました。

 苦労したのは「置き忘れ」をどう判断するか。ただ単に離れただけでなく、スマホに搭載されたモーションセンサーの動き、電波の受信状況などから「置き忘れ」の可能性が高い条件を見いだし、通知を出しています。

 認知症の高齢者の見守りにも応用されています。製薬大手エーザイと開発したボタン型の「Me‐MAMORIO(ミマモリオ)」は、徘徊(はいかい)する高齢者が、街中に設置した受信機やアプリを使う住民とすれ違うと、位置情報が家族に自動通知されます。自治体や医療関係者向けに販売し、実際に行方不明者を発見できた事例も出ています。

 今後は例えば、財布が手元にある期間から買い替え時期を推定するなど、マーケティングへの活用も考えています。マモリオの仕組みを活用した製品・サービスを広げたいです。(挑戦者2020)


 ■企業概要

事業内容:紛失防止タグの企画・開発・販売

本社所在地:東京都千代田区

設立:2012年7月

資本金:5000万円

従業員数:17人(パート・アルバイト含む)


 ■人物略歴

ますき・だいき

 1987年生まれ。広島県出身。広島城北高校卒業。2011年慶応義塾大学商学部卒業、SBIホールディングス入社。SBI証券で新規株式公開(IPO)関連事業を手掛け、12年7月に前身の「落し物ドットコム」を設立。16年4月に「MAMORIO(マモリオ)」に名称変更した。32歳。

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