教養・歴史書評

アメリカ クオモ知事の対策奮闘記、評判は今ひとつ=冷泉彰彦

 ニューヨーク州のアンドリュー・クオモ知事といえば、2020年3月に深刻化した同州の新型コロナウイルス感染拡大において、陣頭指揮を執ったことで有名である。最悪の感染拡大期には毎日州政府庁舎で定例会見を行い、悲痛な表情で死亡者数を発表しつつ、州民への協力を呼び掛けたことは記憶に新しい。

 そんなクオモ知事については、一時は大統領選出馬の待望論が出た時期もあった。そのクオモ知事による、コロナ対策の奮闘記『アメリカの危機 COVID19パンデミックにリーダーシップを学ぶ』が発売された。内容は、最悪期におけるコロナ対策の苦労を日録のように記したものであり、日々の定例会見をほうふつとさせるような膨大なファクトが盛り込まれている。

 だが、現時点ではクオモ知事への全国的な注目は消滅し、結果的に本書の評判も今一つとなっている。理由としては、ニューヨーク州だけで、結果的に49万人を超える感染者、2万5000人を超える死者を出した中では、さすがにクオモ知事の行った対策を成功事例とは言えないということがある。また、感染の最悪期に軽症の高齢者を病院から施設に戻す知事の判断が結果的に感染拡大につながったという批判も大きい。

 この点に関しては、知事としては感染爆発の中で、医療崩壊を避けるためだったとしている。つまり、高齢者を曲がりなりにもベッドと医療機器のある福祉施設へ送ることで、全体のキャパシティーを広げておきたかったのだという。確かにクオモ知事の姿勢は終始一貫しているが、第2波の感染拡大で同様の危機に陥ったテキサス州などでは、高齢者も病院で治療して全体的な死亡率の抑制に成功している。このために、本書におけるクオモ知事の自画自賛的な書き方には批判が寄せられている。また、トランプ大統領はともかく、僚友のはずの同じ民主党のデブラシオ・ニューヨーク市長に対する手厳しい筆致には、両者の不仲を反映しているとはいえ、興ざめという見方もされている。

 クオモ知事に関しては、バイデン氏当選の後には連邦政府の司法長官に起用されるという説も流れていたが、本書の不評により、その可能性はダウンしているという見方もされている。

(冷泉彰彦・在米作家)


 この欄は「永江朗の出版業界事情」と隔週で掲載します。

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