テスラ試乗 操作感はスマホ、加速はポルシェ 補助金魅力も充電器は課題=稲留正英
テスラの入門電気自動車(EV)である「モデル3」を借り、11月の休日、東京─沼津間を日帰りでドライブした。今回、試乗したのは、中間グレードの「ロングレンジ」(655万円、諸費用は別)。モーターが前後二つある4輪駆動車で、航続距離は580キロメートルだ。
外見は普通のセダンだが、フロント部分に空気を取り入れるラジエーターグリルがついていない。カードキーを運転席側のドアピラーに押し当てて解錠する。乗り込むと、運転席のハンドルのほか、中央部分に15インチのタッチパネルがあるだけ。独立した速度計やエアコンスイッチの類いは一切ない。アクセル、ブレーキ、方向指示器、ワイパー、クルーズコントロール以外の操作は、全てこのパネルで行う。まるでスマホのようだ。(EV・電池・モーター)
乗り心地は、ドイツ車のように固め。床に電池を積んでいるため重心が低く、首都高速中央環状線のきついカーブでも、何の不安もなく運転できた。最高速度は時速233キロメートル、静止から時速100キロメートルまでの加速時間は4・4秒と、独ポルシェや伊フェラーリ並みだ。
試乗では、ほぼ満充電の状態で東京を出発。往復とも高速を使った。往路は御殿場のテスラ専用の急速充電施設で40分間充電してから、沼津魚市場に到着。昼食後、東京・南青山のテスラ店舗に戻った。到着時点で電池の残量計は7割、走行可能距離は294キロメートルを示していた。
購入はウェブで
普段使いなら、一番安い航続距離430キロメートルの後輪駆動モデル(511万円+諸経費約20万円)で十分だろう。ガラスルーフも標準装備だ。
購入に際しては、国と東京都がそれぞれ40万円、30万円補助している。また、都では、購入から5年間の自動車税(計12万5000円)と自動車重量税(計8万2000円)が免除される。
個人的には魅力に感じたモデル3だが、日本で普及するにはいくつかのハードルありそうだ。まず、売り物である専用充電施設の数。国内設置は25カ所。ホームページで8カ所の新設を公表しているが、まだまだ少ない。車の操作に関しても、「エアコンやミラーは独立したスイッチが欲しい」というユーザーも多いはずだ。
独自の販売手法も関門だ。購入には同社のウェブサイトから申し込み、価格はワンプライス。「車は営業マンから値引きして買い、ディーラーで手厚いアフターサービスを受ける」のが当然という日本人の意識を変えるのはなかなか骨が折れるだろう。
とはいえ、同じモデル3が400万円弱で販売されている米国と中国ではベストセラーになっている。スマホがガラケーを淘汰(とうた)したように、日本でもテスラのやり方が「標準」になる可能性も否定できない。
(稲留正英・編集部)