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「電動化」が業績・株価を左右 「次の勝者」探しも活発化=神崎修一/桑子かつ代/斎藤信世

 <もうかるEV(電気自動車)・電池・モーター>

 2020年9月中間決算でトヨタ自動車やSUBARU(スバル)などが黒字を確保し、自動車各社が一息ついていた頃。金融市場では、自動車業界の「次の勝者」を探す動きが活発化していた。動いたのは、米最大の公的年金基金である「カルパース(カリフォルニア州職員退職年金基金)」だ。米証券取引委員会(SEC)に提出した資料で、電気自動車(EV)を製造する米テスラ、米ニコラ、中国ニオの株式を買い増したことが判明。テスラはS&P500種株価指数への採用が決まったことも好感され、11月24日に時価総額が5000億ドル(約52兆円)を初めて突破した。SBI証券の遠藤功治・企業調査部長は、「カリフォルニア州は米国でも突出して環境対策に積極的なことが背景にある」と見る。(EV・電池・モーター)

「電動化を制する者が、次世代自動車市場を制する」──。こうした認識が、金融市場関係者だけでなく、実際に自動車ビジネスを手掛ける経営者やビジネスマンの間でも広まっている。

 環境規制の強化は、自動車メーカーの経営に巨大なインパクトを与える。例えば、世界各地で人気のSUV(スポーツタイプ多目的車)。大型で単価が高く、メーカー各社は利益を極大化するために、大量のSUVを市場に投入してきた。しかし、SUVの走行1キロメートル当たりの二酸化炭素(CO2)平均排出量は131グラムで、乗用車の10カテゴリー中、スポーツ車などに続き4番目に多い(調査会社のJATO)。欧州では、来年から排ガス規制が強化され、1キロメートル当たり95グラム以下にCO2を抑えないと、多額の罰金がメーカーに科される。各社は「SUVは売りたいが、罰金は避けたい」という深刻なジレンマに陥っている。

 日産自動車は11月24日、小型車「新型ノート」を発表した。純ガソリンエンジン車を全廃、独自のハイブリッド車(HV)のみの商品構成とした。星野朝子副社長は発表会で「ゼロエミッション(CO2排出ゼロ)社会をリードするため、電動化に集中する」と強調するが、電動SUV「アリア」の発売は来年半ば以降だ。ホンダも同社初の量産型EV「ホンダe」を10月に投入したばかり。倉石誠司副社長は「電動化の加速は待ったなし」と語る。

2000万台市場に

 調査会社の富士経済によると、2035年の世界のEV販売台数は19年に比べ、11・8倍の1969万台に増加する見通しだ。(図1)。現状ではHVの普及が進むが、21年にはEVがHVの販売台数を超えるとみられる。乗用車の新車販売全体に占めるEVの比率は、35年には18%超へ達する見通しだ。

 EV市場への期待は、関連銘柄の株価も押し上げる。EV用電池で急成長を続ける中国の寧徳時代新能源科技(CATL)の時価総額は9兆円に達した。EVの駆動用モーターを手掛ける日本電産も7兆円を超えた(図2)。

 時価総額でテスラに抜かれた既存自動車各社も、フォルクスワーゲンなど欧州勢を中心にEVの投入を加速し、巻き返しを図る。次世代自動車の勝者は誰なのか。長いレースの号砲は鳴らされた。

(神崎修一・編集部)

(桑子かつ代・編集部)

(斎藤信世・編集部)

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