国際・政治

結局は気持ちの問題?「マスクは感染を防げない説」について調べてみた(小林よしのり、泉美木蘭)

フェースガードを着用して菅義偉官房長官(右、当時)の記者会見に臨む手話通訳者=首相官邸で2020年4月30日午前11時31分、竹内幹撮影
フェースガードを着用して菅義偉官房長官(右、当時)の記者会見に臨む手話通訳者=首相官邸で2020年4月30日午前11時31分、竹内幹撮影

――新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからない。

日本に先行して第3波が広がった欧米ではロックダウン等の感染防止策と経済対策を両立させる試みが続いている。

そんな中議論の俎上に載せられがちなのが「マスク」だ。

「せきやくしゃみによる飛沫拡散を防止し感染抑止に役立つ」という意見がある一方、「マスクには効果がない(弱い)」という研究も。

また特に個人意識の強い欧米社会では「マスクをするかどうかは個人の問題」という意見も多い。

アメリカのトランプ大統領をはじめ、著名人がマスク着用を拒否して物議を醸すケースもある。

実際のところ、マスクは効果があるのか?

それとも「お気持ち」に過ぎないのか?

新型コロナ――専門家を問い質す』(光文社)を上梓した漫画家の小林よしのり氏、作家の泉美木蘭氏の対談をお届けする。

スパコン「富岳」のシミュレーションでも明らか?

小林 どこかの会社で、社員100人のうち50人ぐらいが集団感染したというニュースがあったよね。

その会社では、みんなが社内でマスクをしていたんだ。

さらに、窓を開けて換気もしていた。

それでも半分の人が感染している。

なぜそうなったんだ? 一般人はそこを考えようとしない。

泉美 合唱サークルの人たちが、練習をするために、全員マスクとフェイスシールドをつけたのに、感染者が出たというニュースもありました。

岡田晴恵は「合唱は危険ですね」なんて解説していたけど、それって、マスクもフェイスシールドもさほど意味はありません、ということでしかないと思うんですよ

小林 マスクに効果があるという証拠はない。

理研(理化学研究所)の「富岳」のシミュレーションでも、マスクした人が咳をしたら飛沫が20%から30%漏れてるじゃん。

30%も漏れたら、コロナウイルスは何万個も浮遊してるよ。

富岳では、不織布マスクで、体内に取り込まれる飛沫数を3分の1にすることができるが、20マイクロメートル以下の小さな飛沫なら、マスクしてない場合とほぼ同数の飛沫が気管奥に達するという結果だ。

(出典:坪倉誠、室内環境におけるウイルス飛沫感染の予測とその対策 2020年10月13日 記者勉強会 発表資料、理化学研究所/神戸大学

https://www.r-ccs.riken.jp/wp-content/uploads/2020/10/201013tsubokura.pdf)

マスクで感染は防げるという証拠として確立した論文もないんだよ。

コロナウイルスの大きさは0.1マイクロメートルで、あまりにも小さい。

それに対してマスクの網目は、おおよそ10から100マイクロメートルぐらいの大きさなんだ。

つまり、マスクって、コロナウイルスの100倍から1千倍の穴が開いているということになる(図)。

これじゃ通り抜けてしまうんだよ。

それでも、飛沫に乗れば網目のところに引っかかるから、効果があるんだと言う人もいる。でも、飛沫の大きさも5マイクロメートルだからな。

富岳の結果が正しいなら、飛沫を防止できない。

「高性能マスク」でもほとんど差はない?

――そもそも「マスク」の効果については否定的な研究もある。

高性能の医療用マスクと通常のサージカルマスクの効能を比較した結果、「ほとんど差がなかった」という論文があるという。

(出典:JAMA[N95RespiratorsvsMedicalMasksforPreventingInfluenzaAmongHealth Care Personnel:A Randomized Clinical Trial)

また国会などでも着用されている「フェースガード」だが、あれだけ広い開口部が存在する以上は「ウイルスもだだ漏れ」だと小林氏と泉美氏。

効果があるかどうかを確かめもせず、ただただ「クソ真面目」にマスクをしている日本人は「自分の頭で考えていない」のじゃないか、と両氏は憂う。

小林 みんな、もっと目の粗いマスクをつけてるし、あんなマスクじゃ役に立たない。

大臣なんて口元だけの透明シールドつけてるが、あれって100%飛沫が漏れてるじゃないか!

閣議に臨む麻生太郎副総理兼財務相=首相官邸で2020年12月8日午前9時57分、竹内幹撮影
閣議に臨む麻生太郎副総理兼財務相=首相官邸で2020年12月8日午前9時57分、竹内幹撮影

わし、マスクをした状態で、自分の手に向かってフーッと息を吹いてみたけど、やっぱり風を感じたよ(笑)。

泉美 えーっ。完全に漏れてる。小鼻の隙間のところからも漏れていますしね。

小林 鼻のところが一番出ているよ。だけど、完全密閉では息ができないから、当然だよね。むしろみんな、もっと「息ができない」ようなマスクをしなきゃダメ!

泉美 それじゃ死んじゃうじゃないですか(笑)。

小林 だから、病院で使われているマスクは、ものすごく苦しいはずだよ。だがそれも完全ではない。

アメリカで、病院で使われているサージカルマスクとN95マスクの効果を比較するために、それぞれのマスクをつけた医療従事者約2千400人を調査したんだよ。

そしたら、インフルエンザにかかったのは、サージカルマスクで7.2%、N95マスクで8.2%。大して差がなかったんだ。

結局、医療用マスクでもかかる時はかかるということだな。

泉美 うわあ。マスク業界震撼の事実。

小林 それでも、日本人には、マスクをしておけば他人が恐れないという感覚があるからどうしようもないじゃない。

泉美 そうですよね。みんながしてるから、しておいたほうがいい、とか。

科学的な効果があるかどうかより、心理的な安堵感の話なんですよ。

「感染者が殺人鬼に見える」なんてことを言った人もいるし、マスクをしていないだけで、すごい目で睨まれたりもするし。

小林 泉美さんはふてぶてしいんだよ(笑)。もはや、マスクしないだけで不良だね。

しかし、これほどまでに女の人の顔が見られない時代がやってくるとは思わなかったよ。

マスクで隠れているから、美人かどうかまったくわからない。

本当につまらん世の中になったなと思うよ。街の中を歩いていても、ときめかないから(笑)。

泉美 先生って、そんなにときめいてたんですか。

8月に大阪の百貨店へ行ったら、一階正面入口を入ったところのメインスペースが「お洒落マスク」の売り場になっていました。

マスクで客寄せするしかないという状態ですよね。一体どうなってしまうんでしょう。

小林よしのり(こばやし・よしのり) 1953年、福岡県生まれ。漫画家。

泉美木蘭(いずみ・もくれん) 1977年、三重県生まれ。作家。

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