「新型コロナ死亡者数=新型コロナが死因の死者数」ではないことに注意せよ(小林よしのり)
日本では風呂で溺死する者が1年に5000人いる。
新型コロナの死者数は10月18日現在1670人だ。
そう言うと「風呂は感染しない」と反論する者がいるが、感染が恐いのか、死が恐いのか、もはや何のリスクに怯(おび)えているのか分からなくなっているようだ。
日本人は溺死する危険性があるのにシャワーで済ますことなく、湯船に首までつかるから、命知らずの清潔好きである。
その清潔志向が新型コロナの死亡者数を低く抑えているのだ。
いわば日本人は毎年5000人の特攻隊を風呂に送り出しながら清潔感を鍛え、ウイルスと戦っているのだ。
風呂で散華する者も、ウイルスで散華する者も、実は高齢者である。
国民は風呂に赴く高齢者を万歳三唱で送り出さねばならない。
靖国神社に祀(まつ)るべきかもしれない。
現在厚生労働省は、死亡時に感染検査陽性であれば「死因を問わず」全員を「新型コロナ死亡者数」に計上して発表している。
だから精査すれば、新型コロナ感染症以外で死亡していた者が多数である可能性が非常に高く、新型コロナの直接死は500人もいないかもしれない。
インフルエンザは直接死3000人、関連死込み1万人である。
インフルエンザは子供を殺し、若者を殺し、高齢者を殺す情け容赦ないウイルスである。
新型コロナは子供を殺さず、若者を殺さず、基礎疾患を抱えた僅かばかりの高齢者の寿命を終わらせる。
しかも新型コロナによってウイルス干渉(ウイルス感染で自然免疫が誘導され、他のウイルスに感染しづらくなる現象)が起き、インフルエンザの流行が抑えられ、結果的に今年は例年よりも高齢者の死亡者数を減らしている。
まったく新型コロナは慈愛に満ちたウイルスである。
(小林よしのり・漫画家)
本欄は、池谷裕二(脳研究者)、片山杜秀(評論家)、小林よしのり(漫画家)、古賀茂明(元経済産業省官僚)の4氏が交代で執筆します。