仮想通貨 高騰「エイダ」の無申告 情報入手で重点調査対象に=種市房子
国税当局が仮想通貨(暗号資産)の売買で得た所得に対する税務調査を強化している。
仮想通貨といえばビットコインなどがよく知られているが、ここ最近は仮想通貨「エイダ(ADA)」で利益を得た納税者への調査が強化されている模様だ。
エイダは、ブロックチェーン「カルダノ」で運用されている仮想通貨で、2017年に世界大手取引所「ビットレックス」に上場。
上場時の価格が3カ月後には50倍に急騰した。
その後も、他取引所で取り扱いが始まり、調査会社コインマーケットキャップによると、11月30日現在、時価総額で世界8位に位置する。
上場前に販売する「プレセール」が15~17年に実施され、これに応じた投資家には日本人の割合が多かったようだ。
株式上場の仮想通貨版である「ICO(イニシャル・コイン・オファリング)」によって数百倍の利益を得たと言われる。
約3年前に高騰し、1億円以上を稼いだ「億り人」も生まれて脚光を浴びたビットコインやイーサリアムについてはすでに税務調査が強化されていたが、最近はエイダも強化対象となっているようだ。
実際に、たまらん坂税理士事務所(東京都国立市)の坂本新税理士の元には、エイダを巡って税務調査に入られた納税者からの相談が複数件寄せられているという。
原則として、仮想通貨の売買に伴って得た利益は、所得税法上では「雑所得」として扱われ、雑所得の合計額が20万円を超える場合は確定申告が必要だ。
給与所得など他の所得と合算する総合課税で、給与所得自体はさほど多くなくとも、仮想通貨によって得た利益が大きければ、所得税の最高税率(45%)が課されることもある。
また、無申告の場合はさらに無申告加算税というペナルティーも科される。
坂本税理士は「確定申告に慣れていない会社員らも取引に参加しており、税務調査の標的にされやすい」と指摘する。
換金なしでも所得扱い
では、国税当局はどのようにして、取引参加者を特定しているのだろうか。
まず、国内取引所については、取引参加者や残高の情報が任意で提出されたようだ。
国外取引所についても、租税条約に基づき、取引参加者情報を得ているとみられる。
エイダについては、国税当局がプレセールで購入した投資家の名簿など「超A級」の情報を得た可能性が高い。
気をつけなければならないのは、仮想通貨を現金に換えなくても税金がかかることだ。
たとえば、エイダを購入した後、値上がりし、割高になったエイダを元にビットコインを購入した場合だ。
エイダでビットコインを購入した時点でエイダを時価で売ったとみなし、購入時の価格を差し引いて所得を計算する。
含み益を抱えた状態では所得税は発生しないが、売買してサヤを取った時点で所得とみなされる。
税務調査の対象となっているのは、富裕層だけでなく、給与所得が数百万円水準であっても、仮想通貨の高騰で数千万円を稼いだ人もいるようだ。
一部投資家に「インターネット取引などについての確定申告書の見直し・確認について」と称した「お尋ね文書」を送っている税務署もあり、「自主的な申告」を促している。この文書が届いた納税者は、まず仮想通貨で得た利益の無申告が疑われていると思って間違いない。
(種市房子・編集部)