マーケット・金融世界経済総予測 2021

日銀が実証実験開始へ!「デジタル円」はいつ導入されるのか

    (Bloomberg)
    (Bloomberg)

    ついに中央銀行が発行開始 人民元は21年内にも実用へ

    「中央銀行デジタル通貨(C BDC=Central Bank Digital Currency)」が、いよいよ実用化の段階に入った。

    中銀デジタル通貨とは簡単にいえば現金(銀行券)をデジタル化したものと言えよう。

    人々はスマートフォンにアプリを入れ、電子ウォレット(財布)で残高を管理し、個人間の送金や店舗での支払いに充てることになる。

    利用方法は、すでに使われている電子マネーやQRコード決済などの支払い手段によく似ている。

    しかし、電子マネーなどとの違いは中央銀行が発行した「中銀マネー」であることだ。つまり、「現金と同じ」機能を持つことになる。

    世界初の本格的な紙幣は11世紀の中国・北宋で使われた「交子」と言われる。

    それ以来、紙のお金(紙幣)を使ってきた人類は、1000年ぶりにお金の形態が変わるという大変革期を迎える。

    第1号はバハマ

    中銀デジタル通貨は20年10月以降、一気に導入の動きが加速した感がある。

    カリブ海の島国であるバハマは10月20日から「サンド・ダラー」の運用を正式に開始。

    世界初の中銀デジタル通貨導入国の栄誉を手にした。

    バハマにわずかに遅れたが、カンボジアでも10月28日に「バコン」の正式導入を発表した。

    バコンには日本企業ソラミツ(東京都千代田区)のブロックチェーン技術が採用されている。

    両国は1年ほど前から消費者や店舗が参加して試験運用を行っていたが(表1)、実際に欧米などの先進国に先行したことは衝撃を与えた。

    ただし、現時点ではまだ利用者、利用店舗ともに限定的であり、利用が国民全体に広がるまでには時間がかかる見込みである。

    一方で、主要国の中では中国が「デジタル人民元」の導入に向けて着々と準備を進めている。

    中国人民銀行では、20年5月から蘇州(江蘇省)、深圳(広東省)、成都(四川省)、雄安新区(河北省)などの地方都市で試験運用を実施。

    スターバックス、マクドナルド、サブウェイ、配車アプリ「ディディ」、食品配達「美団」、動画サイト「ビリビリ」などの有名企業や政府機関などが参加した。

    8月までに300万件以上の取引で11億元(約165億円)もの決済が行われるなど本格的である。

    中国の4大商業銀行では、デジタル人民元専用のアプリを開発済みの模様だ。

    深圳で10月、デジタル人民元を市民に広く配布する大規模な実験が行われた。

    1000万元(約1億5000万円)分のデジタル人民元を抽選で5万人に配布、1人当たり200元(約3000円)を受け取った人々が3000以上の指定店舗で利用。

    店舗での支払いはQRコードを利用して行われ、決済大手アリペイなどのサービスに慣れた人々による利用実験は成功裏に終了したとされている。

    中国政府は、人民元を「実物とデジタルの形式が含まれる」と明記する方向で、法律の改正を進めており、デジタル人民元の実用化に向けて法的根拠を明確にする構えだ。

    中央銀行である人民銀行は年内に地方レベルでの実験を終えた上で、21年中には全国的な展開を図っていく予定という。

    約14億人の人口を擁し、世界第2位の経済力を有する中国で実用化されれば、インパクトは極めて大きい。

    欧州中央銀行(ECB)も10月初めに「デジタルユーロ」導入に関するリポートを公表した。

    ラガルドECB総裁は、かねてから中銀デジタル通貨に積極姿勢を示していた。

    リポートによるとECBは各方面の意見を聞いた上で21年半ばには実証実験を始めるかどうかを決定するとの方針である。

    欧州は中国と比べて一見慎重に見えるが、一方でデジタルユーロの商標登録を申請しており、内心は「やる気満々」と見ていいだろう。

    デジタル円の計画発表

    日本銀行は20年7月に「デジタル通貨グループ」という専門部署を設けて検討を始め、10月には「中央銀行デジタル通貨に関する日本銀行の取り組み方針」を公表した。

    日銀は3段階の実証実験を進めていく考えだ。

    第1段階はデジタル円の基本機能(発行・送金・還収)の検証について行われ21年度の早い時期に開始する予定。

    第2段階は時期は未定だが周辺機能の検証、第3段階は実際に店舗や消費者が参加するかたちで利用実験が行われる予定である(表2)。

    もし日銀が「デジタル円」を発行したとすると、それは「どこでも、誰にでも使えるという「汎用(はんよう)性」を持つことになり、また利用者間で繰り返し譲渡できる「転々流通性」を持つことになる。

    さらに、現金と同様に、利用の手数料(店舗も個人も)は無料となるものと想定される(このことは、手数料がネックとなって進まないキャシュレス化が大きく進展する可能性を示唆する)。

    そして、中銀が発行しているため安全性が高く、それにより、受け渡しを行った瞬間に決済が完了するという「決済完了性」(ファイナリティー)を持つことになる。

    どこでも誰にでも使えて、無料で、しかも安全性が高いとなれば、急ピッチで普及する可能性もあるだろう。

    デジタル円が誕生するのはいつか。中国では14年にデジタル人民元の検討を始めた後、21年には本格導入を行う予定であり、7年の歳月をかけて開発に成功する見込みだ。

    カンボジアのバコンは16年の検討開始から4年で発行にこぎ着けた。

    20年から検討を開始した日銀も同様の期間でデジタル円を完成させる可能性が高い。

    (中島真志・麗澤大学教授)

    (本誌初出 クローズアップ7 デジタル通貨 人民元は21年内にも実用へ=中島真志 20210105)

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