資源・エネルギー

再エネ推進で「2038年には原発ゼロ」が可能になるワケ

    将来は再生可能エネルギーの大量導入が中心になる(北海道寿都町の風力発電施設)
    将来は再生可能エネルギーの大量導入が中心になる(北海道寿都町の風力発電施設)

    現行の日本の温室効果ガス削減目標は「2030年に13年比26%削減」と、EU(欧州連合)の1990年比55%削減と比べて著しく低い。

    国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)など研究分野からは、50年にゼロを達成するためには、30年に45%の削減が必要と指摘している。

    日本の産業が世界の“脱炭素経済競争”に肩を並べていくためには、国が意思表明をしなければ、世界の機関投資家から認められない。

    WWFジャパンは昨年12月「脱炭素社会に向けた2050年ゼロシナリオ(WWFシナリオ)」を発表した。

    システム技術研究所(東京都文京区、槌屋治紀所長)に委託して検討を続けてきたものである。

    その結果、50年に化石燃料を脱し、原子力発電に頼らず、再生可能エネルギー(再エネ)ですべてを賄えることが分かった。

    シナリオの詳細は報告書をご覧いただきたい。

    本稿では、50年カーボンゼロ実現の鍵となる30年の電源構成に的を絞って述べたい。

    再エネ電源は50%

    現在、政府の30年電源構成の見通しは、石炭火力が26%も占めており、再エネは22〜24%にすぎない(図1)。

    原発も19年時点で6%程度の稼働実績しかないのに、20〜22%も見込むなど非現実的な想定といえる。

    WWFシナリオでは原発は稼働30年で廃止という条件を設定し、現実を見据えて、稼働中および再稼働が見込まれる原発のみを試算した結果、30年に約2%となった。

    38年には全廃、原発ゼロとなる。再エネは約50%に設定。これらから石炭火力は全て廃止が可能だ。

    石炭火力全廃の穴埋めは、既設天然ガス火力の現状の稼働率35〜50%を、60〜70%に引き上げることで補える。

    現状の稼働率が低めなのは、燃料費(LNG価格)が石炭よりも高いからだろう。稼働率向上で火力発電の新規増設の必要もなくなる。

    また、図では示していないが、省エネルギーは、政府見通しの「30年で最終エネルギー需要が13年比10%(正味)減」よりも高い、15年比21・5%減が可能とした。

    これは経済的に可能な省エネ対策の進展や産業分野のインバーター適用など、現状の技術の急速な普及を考慮した試算結果。

    50年では人口減少を見据え、産業構造の変化、さらに鉄鋼業の脱炭素化などが進んで、15年比約58%減と予測している。

    発電を再現

    WWFシナリオで最も重要なポイントとなるのが、シナリオに実現性を持たせるため、天候で発電量が変動する風力・太陽光発電などの再エネが50%、石炭火力ゼロ、原発2%という状況で、電力需要をどれだけ賄えるのか、「ダイナミックシミュレーション」(コンピューターを用いて精緻に再現)を実施した点だ(図2)。

    全国の電力会社10社の管内にある既存の天然ガス火力や石油火力の発電設備容量を前提として、10電力会社のエリアごとに、全国842地点の地域気象観測システム「アメダス」の標準気象データを用いて、1時間ごとに1年間、風力・太陽光発電がどれくらい発電できて、どれくらい電力需要に応じられるかを再現した。

    図2は通年のシミュレーションから、4月15〜17日分を抽出したものだ。

    縦軸の棒グラフは、電力10社の発電設備の発電量と再エネの発電量を合計したもの。

    前述のように、石炭火力の発電量はゼロ、これを補うため、天然ガス火力の稼働率が向上している。

    横軸は時間で、折れ線グラフは電力需要。太陽光発電は当然ながら、日没後は発電量がなくなる。

    図2でも分かるように、電力供給不足の状態は起きていない。通年でも同様の結果となった

    また、今回のシミュレーションでは、現状の地域間連系線を想定して行っており(増強予定分含む)、少なくとも、30年には、既存の電力インフラのままで再エネ50%が可能であることが分かった。

    30年に49%削減可能

    これらの結果、WWFシナリオであれば、エネルギー起源CO2排出量は30年に13年比49%(温室効果ガスでは45%)削減、40年は70%(同68%)削減、50年に排出ゼロが可能だと私たちは試算している

    欧州は50年カーボンゼロを目標に据え、そこから逆算して削減対策を講じていくという「バックキャスティング」の考え方で、再エネや電気自動車(EV)の導入を進めている。

    日本は50年カーボンゼロに本気で取り組むということを国際社会に示したいのならば、WWFシナリオのようなエネルギーのあり方を検討し、11月の国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)までに、パリ協定に提出している30年の国別削減目標を引き上げる必要があろう。

    (小西雅子・WWF〈世界自然保護基金〉ジャパン専門ディレクター、昭和女子大学特命教授)

    (本誌初出 再生可能エネルギーで電力賄う 2038年には原発ゼロも可能=小西雅子 20210126)

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