ガソリン車廃止で「日本の雇用が83万人減少」という不都合な事実
政府が2020年12月に発表した「グリーン成長戦略」では、「2050年に自動車の生産、利用、廃棄を通じて二酸化炭素(CO2)ゼロを目指す」としている。
これは50年までに全ての自動車が電気自動車(EV)に置き換わり、ガソリン車のほかハイブリッド車(HV)の需要もゼロにすることを意味する。
ガソリン車とHVの全てがEV置き換わった場合、日本の自動車業界で働く人たちに大きな影響が出ると見られる。(ガソリン車ゼロ時代)
日本自動車工業会(自工会)によると、自動車関連業の就業人数は542万人に上る。
このうちEVシフトで影響が出ると思われるのは、製造、部品資材、販売・整備、ガソリンスタンドの従事者、計271・1万人だが、どう変化するか、現時点で国による試算はない。
一方、日本と同様、自動車を基幹産業とするドイツは、国が試算を出している。
独連邦経済エネルギー省は、このまま次世代車へのシフトが進んだ場合、製造および資材は17年の92万人から50年に75万人に減少(約19%減)、販売・整備は同64万人から28万人に減少(約56%減)するとの予測を公表した。
このドイツの変化率を、日本に当てはめてみるとどうなるか。
製造・資材合計で20年の134・4万人は50年に109・6万人に、また、販売・整備は同103・1万人から45・1万人にそれぞれ減少し、製造・資材、販売・整備の合計では同237・5万人から154・7万人と、およそ83万人も減る、という計算になる。
これらの数値は、あくまで参考値として提示した。
というのも、日本とドイツではガソリン車規制に違いがあり、定義される業種にも一部で差異がある。
また製造ロボット導入による省人化、自動運転やカーシェアリングなどの普及による影響も含まれる。
雇用がどう変化するか正確に見通すことは難しいが、大きな影響が出ることは確かだろう。
政府は将来的な見通しをもって、グリーン成長戦略の具体策を進めていく必要がある。
(白鳥達哉・編集部)
(本誌初出 脱ガソリンと雇用 製造・資材、販売・整備の就業者 2050年までに80万人減少も=白鳥達哉 20210202)