コロナワクチン 2月下旬に接種開始も 供給数の見通し立たず=前田雄樹
1月20日、日本政府が新型コロナウイルスの「感染対策の決め手」と位置づけるワクチンについて、米ファイザーとようやく正式な供給契約を結んだ。年内に約1億4400万回分(約7200万人分)の供給を受けるというもので、昨年7月に発表された基本合意(今年前半に1億2000万回分)から、供給量が上積みされた。一方で世界的な需要過多によって、供給のスケジュールは見えづらくなっている。
ファイザーは昨年12月、独バイオベンチャーのビオンテックと共同開発したワクチンの国内での販売承認を申請。政府は2月中旬に承認の可否について判断を下す見込みで、同月下旬からの接種開始を目指す。
当面は供給量が限られるため、接種は、(1)医療従事者(約370万人)、(2)65歳以上の高齢者(約3600万人)、(3)基礎疾患がある人(約820万人)・高齢者施設従事者(約200万人)──の順で進める。
高齢者への接種の案内が始まるのは3月中旬以降で、厚生労働省は開始から3カ月程度で高齢者への接種を終えられるよう、自治体に体制整備を求めている。一般の人への接種が始まるのは5月以降になる見込みだ。
政府はファイザーのほか、英アストラゼネカから1億2000万回分、米モデルナから5000万回分の供給を受ける契約を結んでおり、合わせて3億1400万回分を確保している。アストラゼネカは昨年9月から国内で初期の治験を行っているが、まだ販売承認の申請には至っていない。モデルナのワクチンも、国内供給を担う武田薬品工業が1月21日に初期の治験を始めたばかりで、承認は5月以降になると見られている。
入念な準備が必須
しばらくはファイザー製ワクチンだけに頼らざるを得ない状況だが、需給は世界的に逼迫(ひっぱく)している。
同社は1月15日、増産に向けた生産ライン見直しのため、欧州への供給を一時的に減らすと発表。アストラゼネカも、3月までの欧州向け供給を当初の予定から6割減らす。菅義偉首相は今年6月までに全国民分のワクチン確保を目指すとしているが、国内にいつ、どれくらい入ってくるのか、見通すのは困難だ。
国は、ワクチンを保管するための超低温冷凍庫2万台を確保し、1月27日には川崎市で接種のシミュレーションを行うなど、準備を急ピッチで進めている。自治体も体制構築を急ぐが、接種場所や医療従事者の確保など、課題は山積している。ファイザーのワクチンは解凍後5日以内に使い切らなければならず、輸送から接種まで綿密に計画しなければ、限られたワクチンが無駄になってしまう。
新型コロナウイルスワクチンの接種は、かつてない大規模な国家プロジェクトとなる。円滑に進めるには、国民への正確で分かりやすい情報提供も欠かせない。高い効果が期待されるだけに、入念な準備の下、迅速に普及させることが求められる。
(前田雄樹・AnswersNews編集長)