30年後に1兆円市場に大化けする洋上風力と並ぶ未来産業の本命は「直流送電線とデジタル通貨と〇〇」
「脱炭素社会の大本命」がいよいよ動き出した。石油など化石燃料に代わる新エネルギーの中でも、潜在力が大きいと期待される洋上風力発電だ。
政府は昨年末、2040年までに30ギガ~45ギガ㍗(1ギガ㍗は100万㌔㍗)の発電能力を確保する目標を掲げたことで、大手電力や商社、エネルギー企業を中心に発電事業に参入する動きが加速。さらに、風車関連設備や電線・海底ケーブル敷設など送配電網整備に電工・重工・エンジニアリング各社が、また、海中・海底工事関連でゼネコン各社も続々と参入している。
洋上風力は30年後に1兆円市場へ
矢野経済研究所の試算によると、国内の洋上風力発電の市場規模は25年度3970億円、30年度に9200億円に成長する。脱炭素の流れによっては、さらに市場拡大は加速する可能性が高い。発電量が天候など自然環境に左右される再エネの普及に欠かせない高性能の大型蓄電池や、AIやIoTでエネルギー使用の最適化を目指す「デジタルトランスフォーメーション(DX)」市場も急拡大している。
「水素革命」は日本から起きる
再エネだけではない。もう一つの新エネの「切り札」と目される水素、アンモニアの実用化に向けても、主要企業が投資を加速。この分野では重化学工業に厚みがある日本に一日の長がある。
石油会社(旧東亜燃料工業=現ENEOSホールディングス)の経営に長年携わり、日銀審議委員も務めた中原伸之氏は、「今後、石油に代わるエネルギーが出てこないと、新たな産業革命は本格化しない。次のエネルギー源の本命は水素。日本から革命が始まる可能性もある」と期待する。
CO2から作った「メタン」を都市ガスに
さらに、足元で急速に注目を高めているのが「メタン(CH4)」だ。CO2と水素を合成してメタンを作り都市ガスの原料として家庭などに送る「メタネーション」に都市ガス業界が乗り出した。石炭火力発電所などから出るCO2を再利用するという「逆転の発想」で約3・2兆円に上る液化天然ガス(LNG)の輸入額を大幅に削減できる可能性がある。
脱炭素の潮流の中で世界に後れを取ったと見られている日本だが、エネルギー政策に詳しい安田陽京大教授は「50年までに日本の電源構成の9割を再エネにすることは可能」と見ている。ESG(環境・社会・企業統治)に対する企業や国民の投資意欲も、今までになく高まっている。脱炭素を実現する新エネの〝大開拓時代〟は、始まったばかりだ。
4月19日発売の「週刊エコノミスト4月27日号」は、ほかに「CO2と水素でメタン合成 都市ガスが本腰」「水素・アンモニアに長期視点で投資妙味」「一瞬で数億円の価値に 新資産NFTって何だ?」も掲載しています。