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資源・エネルギー 電力が危ない

幻の「緊急事態宣言」──を追う 停電の一歩手前だった=編集部

 昨年12月下旬から今年1月にかけて、日本の電力供給は危機的な状況に陥った。需要に対して供給が追い付かないという電力需給逼迫(ひっぱく)だ。(電力が危ない)

 全国の電力需給を監視している「電力広域的運営推進機関」は1月6日、初となる非常災害対応本部を設置。対応に狂奔した。同機関は昨年12月15日から今年1月16日までの1カ月間に、電気事業法に基づく「電力融通指示」(電力会社に対し、他電力会社へ電力を供出することを指示)を218回も出した。通常は多い時でも年4~5回程度だ。

 複数のシンクタンク関係者が「東日本大震災以来の計画停電一歩手前の状況だった」と、その時を振り返っている。「あの時、電力会社は計画停電のプラン作りを始めていたはずだ」と語る関係者もいた。

 資源エネルギー庁が昨年10月30日に発表した、今冬の電力需給見通しによると、「安定供給に最低限必要とされる予備率3%は確保できる見通し」で、「無理のない範囲での節電の協力を呼びかける」としている。この見通しは、厳冬の場合や発電所の故障なども加味して作成したものだ。

 なぜ、今冬の電力危機は起きたのか。多くの関係者が「発電設備(キロワット)は足りていたが、実際の発電(キロワット時)が十分できなかった」ことを挙げている。厳冬で電力需要が急増する一方で、燃料の液化天然ガス(LNG)の不足や石炭火力発電の相次ぐ故障、秋の少雨と積雪による水力発電の能力低下、悪天候による太陽光発電の出力低下などが重なり、発電量が低下。資源エネルギー庁の資料によると、昨年12月1日から今年1月22日まで、1日平均で7300万キロワットの出力低下があったという。

 また、経済効率性を重視する電力自由化が進んだことで、発電設備(特に石油火力)やLNG在庫量の合理化が加速していることも背景にある。さらに「脱炭素」に向けた再生可能エネルギーの急拡大が、火力発電の維持や燃料の消費量予測を難しくしている。

 資源エネルギー庁は対策を検討中だが、決め手に欠ける。

(編集部)

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