新資産「NFT」とは? 一瞬にして数億円の価値 仮想通貨超えるバブルの極地=高城泰
「管理するタレントのデジタルカードを発行し、オークションにかけたところ、2日で10イーサリアム(約240万円、イーサリアムは仮想通貨「イーサリアム」の単位で1イーサリアム=約24万円)の入札があった」(未来産業の本命)
そう話すのは、ある女性タレントのマネジャーだ。タレントのデジタル写真をカードに加工して販売したというが、通常のデジタルデータと異なるのは、このデジタルカードが発行数に限りがある点だ。それ故、希少性を持つことになり、価値が上がったのだ。
一般的にデジタルデータは何度でも複製できる。一方、こうしたデジタルカードは、「NFT(ノン・ファンジブル・トークン=非代替性資産)」と呼ばれ、「ブロックチェーンに記録させる」ことで、それと同じものは世界に二つとないデータにすることができる。タレントのデジタルカードも、仮に10枚発行したとしても、それぞれに固有の「シリアルナンバー」が付与されるため、一つ一つは「別物」だ。
こうしたNFTが、「一点物」のデジタルアート(美術品)、人気のタレントやスポーツ選手のデジタルカード、ゲーム内のアイテム(道具)などの流通を可能にし、そこに莫大(ばくだい)なマネーが流入してきている。
デジタルイラストに75億円
最近、高値が付いて話題になったNFTを紹介すると、米国のグラフィックデザイナーが描いたデジタルイラストに75億円、ツイッター創業者による最初のツイートに2億円――など、仮想通貨取引とは比較にならない高額さだ。
NFTは、ブロックチェーンを利用して保有、譲渡が可能な点では仮想通貨と共通だが、あくまで通貨ではなく「デジタル資産」である。
NFTで最も盛り上がっているのはスポーツ系のトレーディングカードだ。米プロバスケットボールNBAが発行するNFTトレカ「トップ・ショット」は、動画のデジタルカードとなっており、発売直後に即完売し合計2億円を売り上げる人気ぶりで転売市場では1万ドル(約110万円)を超える価格での売買も頻繁だ。
実物のトレカは、盗難や偽造のリスクもあったが、NFTでは売買されるたびにブロックチェーンに所有者の履歴が記録され、真正性も保証される。盗難や偽造のリスクは格段に小さいというメリットがある。
日本でも、人気キャラクターを抱える出版社やゲームメーカー、人気アイドル、現代美術家などがNFTの発行を目指している(表)。ゲーム内アイテムであるNFTを取引する市場を開設したコインチェックのような会社も増えるだろう。
権利者以外が発行する危険も
同時に、NFTの持つさまざまな課題も表面化しそうだ。NFTの発行者が本来の権利者であるかどうかのチェック機能はないため、「インターネットで拾った画像や動画を使って人気アイドルのNFTを発行する」といったことも容易だ。
こうした課題を抱えながらも、アーティストやタレントが企業を介在せずマネタイズする手段として、あるいは著作物などの真正性や保有証明を低コストに保証する仕組みとしてNFTの導入は今後も進んでいきそうだ。
(高城泰・金融ライター)