週刊エコノミスト Online日本経済 大復活

「2兆ドル貯蓄の3分の1が消費に回る」米元財務次官が予想する経済大爆発

    観光客でにぎわう米国のサンフランシスコ (Bloomberg)
    観光客でにぎわう米国のサンフランシスコ (Bloomberg)

     日本経済に大きな影響のある米国経済は健全な景気回復と過熱の間で揺れる。元FRB国際金融局長、オバマ政権下で国際問題担当の財務次官を務めたネイサン・シーツ氏(現PGIMフィクスト・インカムのチーフ・エコノミスト)に注目点を聞いた。(聞き手=岩田太郎・在米ジャーナリスト/構成=桑子かつ代・編集部)

    消費のピークは7、8月

    ―― 新型コロナウイルスのワクチン接種が進む米国で、2021年夏から猛烈な消費の嵐が来そうだ。

    シーツ リベンジ消費(猛烈な反動消費)には2つの理由がある。過去1年間、米国の人々は外出制限により、休暇旅行や外食、映画館に行ったりすることができなかった。この反動でサービス面で大きなリベンジ消費があるだろう。もうひとつは、消費手控えによる貯蓄が、およそ1兆5000億~2兆㌦(162兆~220兆円)の水準まで増えたことだ。消費はこのうちの約3分の1と、かなり大きな規模が予想される。(日本経済大復活)

    ―― 消費が秋から冬にかけて消費が減速することはないか。

    シーツ 21年の最大の消費拡大は4~6月期に始まり、7月、8月あたりにかけて続くと思う。10~12月期もかなり強いだろうが、4~6月期と7~9月期と比較すると、少し勢いが弱まる可能性がある。22年には大規模な消費が落ち着き、政府の財政出動も縮小される。その際に、米経済が強くあり続けるのか、あるいは減速するかが問題だ。

    年内の量的緩和縮小も

    ―― 米連邦準備制度理事会(FRB)はいつ量的緩和の縮小(テーパリング)を始めるとみているか。

    シーツ この先長期間、利上げが実施されないことは判明している。インフレが安定して2%を超えることを確認した上で、22年年初に量的緩和の縮小を議論し始め、同年3~4月に実施するのではないか。利上げは24年となるだろう。ただ、不確実な要素は多い。21年の米国経済が強ければ、21年にテーパリングを開始するかもしれない。

    インフレ率は3%上昇

    ―― インフレがコントロール不能になる場合もあるとみるエコノミストもいる。

    シーツ 21年は総需要が総供給を上回る状態が続くだろう。特に年後半は供給不足から価格が上昇し、労働力が不足する可能性がある。インフレは前年比で3%上昇すると予想する。しかし、22年に入ると供給が需要に追いつき、総需要は弱まってくるだろう。さらに、人口の高齢化やテクノロジーなど構造的にインフレを押し下げる要因は、パンデミック後も変わらない。そのため、インフレ率は22年に2%、あるいは2%未満に下降を始めるとみている。

    ―― 景気回復での為替政策をどうみているか。

    シーツ ドル高は米輸出にとり不利なため、製造業者や労働者など一部勢力には人気がない政策だ。そのため、バイデン政権が戦術的に弱いドルを容認することがあるかも知れない。しかし一方で、イエレン財務長官が弱いドルを追求することを明言することは、考えにくい。イエレン氏は「為替レートは市場で決められるべきだ」と主張すると思われる。そして、トランプ前政権が口先介入でドル安を誘導しようとしたようなことは、イエレン財務長官の元では起こらないと考える。

    長期政権ならTPP復帰も

    ―― 米国が前トランプ政権で離脱した環太平洋パートナーシップ協定(TPP)に復帰することはあるか。

    シーツ 私は経済面・地政戦略面からTPPを強く支持している。バイデン政権内にも同じ考えの人たちがいる。しかし、政権にとり通商は優先順位が特に高くない。米通商代表部(USTR)は、既存の通商条約の執行に集中するだろう。民主党内でも自由貿易は特に人気が高いわけでもない。政権が4年だけではなく8年間続くとなれば、TPP復帰や世界貿易機関(WTO)改革が視野に入ってくると思う。

    ―― 多くの識者は、バイデン大統領がニューディール政策を実行したルーズベルト大統領に多くの面で倣っていると指摘している。バイデン氏は21世紀のルーズベルトになれるか。

    シーツ バイデン大統領はホワイトハウスの執務室に新たにルーズベルト大統領の肖像画を掲げている。1・9兆㌦(約200兆円)規模の新型コロナ追加景気対策を成立させ、それに加えてさらに2・5兆㌦(約270兆円)のインフラ計画を打ち出し、その上に1~1・5兆㌦の社会的財政支出を行う意向だ。これらはほとんどすべて成立する公算が大きい。合算すれば5・5兆~6兆㌦(約650兆円)もの財政出動になる。ニューディールと比較できるかはわからないが、近年において最も経済を変革させるプログラムとなろう。


     ■人物略歴

    Nathan Sheets

     米プルデンシャル・ファイナンシャル傘下のアセットマネジメント会社であるPGIMフィクスト・インカムのチーフ・エコノミスト。2007~11年に米連邦準備制度理事会(FRB)国際金融局長、14~17年にオバマ政権下で国際問題担当の財務次官。マサチューセッツ工科大学(MIT)で経済学博士号。1964年生まれ。

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