経済・企業日本経済 大復活

ワクチン接種で需要大爆発も 「28兆円」が潤す観光や外食=神崎修一/桑子かつ代/斎藤信世

     日本各地で新型コロナウイルスの「第4波」が懸念されているにもかかわらず、全国の観光地や繁華街で人出が戻り始めている。(日本経済大復活)

     NTTドコモがスマートフォンの位置情報を基にまとめた4月18日午後3時時点の主要都市の人出は、前週4月11日との比較で全国の主要駅や繁華街計95地点のうち、約6割の56地点で上昇した。感染拡大前(20年1月18日~2月14日)の休日平均と比べても、京都・四条河原町付近で30・0%増、沖縄・県庁前も10・0%増と観光地では急回復がみられる。東京・銀座で1・1%減、名古屋・栄駅で1・7%減、札幌駅で3・5%減と、減少がわずかにとどまるところも多く、コロナ前の水準まで戻している地域が多い(図1)。

     学生の春休みにあたる3月下旬の京都は、観光客であふれていた。

    観光客の戻り鮮明

     清水寺への参拝道である「二年坂」は、着物姿の男女が写真撮影を楽しんでいた。五重塔の前では参拝客が密集し、スマートフォンでシャッターチャンスをうかがう。NTTドコモのデータでも、京都・四条河原町周辺は2月中旬から感染拡大前の人出を上回る状態が続いており、観光客の戻りが鮮明だ。

     各地でまん延防止等重点措置が適用され、3回目の緊急事態宣言が発令されようとしているのに、なぜか。それは、コロナの感染拡大から1年以上が経過、人々がコロナ慣れし、「感染への恐怖心が薄れてきた」(東京大学の渡辺努・経済学部教授)ためだ。コロナによる打撃の大きかった外食産業でも変化が現れている。大和証券の外食アナリストの五十嵐竣氏は、「テークアウトからお店でのイートインへ需要の逆流が始まっている。特に郊外型の回転ずしや焼き肉店が好調」と語る。「消費者も、感染予防の仕方が分かってきた。緊急事態宣言等の動向次第だが、時短営業の解除以降、外食各社の月次の数字は回復感が鮮明になるのではないか」と話す。

     海外に比べ、大幅にもたつくワクチン接種が、国内消費の回復を妨げているのは事実だが、すでに、金融市場の一部では、コロナ後の日本経済の急回復を予想し始めた。根拠となるのが、「28兆円に及ぶ潜在的なペントアップ(繰り越し)需要の存在」(SMBC日興証券の牧野潤一チーフエコノミスト)だ。

     日銀の資金循環統計によると、2020年12月末現在で家計部門の現預金は1056兆円と過去最高を記録した。20年3月末は999兆円で、コロナの感染拡大後に残高は急増した(図2)。牧野氏がこの統計を基に推計したところ、この1年間に家計の現預金が、通常時よりも約28兆円が積み増されたという。

     このうち約13兆円分は消費が抑制されたためだ。突如始まった「在宅勤務」に対応するため家電や家具など「財」の消費は活発的に行われたが、外出自粛の傾向が強まり、旅行は控えられ、忘・新年会など大人数での宴会も自粛を余儀なくされた。残りの約15兆円分については大半が定額給付金の影響とみられる。新型コロナへの経済対策として昨年、すべての国民に1人当たり10万円が配られた。しかし、大半は使われないまま銀行の口座に眠っている。

     この28兆円は「過剰貯蓄」といえる。新型コロナの感染が終息に向かえば、サービス消費を中心に需要が爆発し、国内総生産(GDP)の5割強を占める個人消費が一気に息を吹き返すきっかけになる可能性がある。牧野氏は「5月の連休後に感染者数の拡大がなければ、早ければ6月にも回復が見通せるかもしれない」とみている。

    米の3~6カ月遅れで回復

     足元の株式市場は、日本国内でのコロナ変異種の感染拡大や緊急事態宣言の新たな発令を警戒し、調整局面に入っている(4月21日現在)。日本は2月から医療従事者向けのワクチン接種が始まったが、他の先進国に比べ接種ペースは遅く、それが最高値を更新する米国株に比べ、上値を抑える要因となっている(図3)。

     1日当たりの新規感染者についても、米国が4万2018人(4月18日)で、ピーク時の30万310人(1月2日)から8割以上減少しているのに対し、日本国内の感染者数は1日当たり4000人を超え、大阪府などでじわじわと増加傾向がみられるのも懸念材料だ。

     だが、アセットマネジメントOneの清水毅・調査グループ長は、「株価は実体経済より先に景気の回復を織り込んでいく。ワクチンの接種が進む米国では、4~6月期以降、製造業から非製造業への需要のシフトが起きてくるだろう。日本は、ワクチン次第ではあるが、米国の3~6カ月遅れで、サービス消費が活発化する可能性がある」と見る。

     松井証券の窪田朋一郎・シニアマーケットアナリストも、「米国でもワクチンの接種が進むにつれ、サービスセクターの業績が回復している。ワクチン接種が遅れている日本は米国と時間差があるが、今後、昨年のコロナで大きく売り込まれた百貨店、鉄道・航空、飲食、旅行関連の銘柄が、業績変化率の大きさへの期待から上昇する」との見立てだ。

     米国では7月4日の独立記念日までに接種をおおむね終えて、経済や社会を正常化させる方針だ。日本国内でも5月から高齢者(65歳以上)向けのワクチン接種が本格化し、6月中に全国すべての高齢者へ接種するためのワクチンを供給する計画だ。感染すると重症化しやすい高齢者へのワクチン接種が進めば、社会全体に安心感が広がるのは間違いない。

     星野リゾートの星野佳路代表は、接種が政府の計画通りならば、観光需要は7月から回復すると予想する(星野リゾートインタビューはとバスインタビュー)。日本経済の完全復活は意外と近いのかもしれない。

    (神崎修一・編集部)

    (桑子かつ代・編集部)

    (斎藤信世・編集部)

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    日本経済大復活第1部14 ワクチン接種で需要大爆発も 「28兆円」が潤す観光や外食 ■神崎修一/桑子かつ代/斎藤信世17 インタビュー 渡辺努 東京大学 経済学部教授 「コロナ版『渋滞予測』で消費と感染防止の両立を」18 カード情報からみる国内消費 旅行、娯楽、外食に明るい兆し ■編集部20 小売り [目次を見る]

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