不動産 コロナ禍で高まる投資意欲 回復局面でリスク志向=桑子かつ代
「1000万円や5000万円単位で投資する人が出てきた」。インターネットを通じて小口投資資金を集めるクラウド型不動産投資のロードスターキャピタルの岩野達志社長は語る。2月に渋谷区の広尾の新築商業ビルで募集した3億6000万円は2分23秒で応募が完了。本来は20万〜30万円を中心とする小口投資に多額の個人マネーが流れている。日経平均株価が3万円前後で推移する中、株高がもたらす資産効果を分散化する狙いもある。(日本経済大復活)
コロナ禍で急落していた不動産投資信託(Jリート)市場の回復も鮮明だ。東証リート指数は2020年3月の底値から8割以上上昇した。20年末からの配当含みのパフォーマンスでは、東証リート指数のトータルリターン(総合収益率)は22・41%と、日経平均とTOPIX(東証株価指数)の11・3〜11・4%を大きく上回る。
不況後ホテル投資は鉄則
東証リート指数の上昇銘柄で目立つのは観光客の減少で打撃を受けているホテル系だ。1年間の上昇率順位(4月13日現在)で、61銘柄中2位はジャパン・ホテル・リート投資法人(94%)で、その他に星野リゾート・リート投資法人、森トラスト・ホテルリート投資法人などが上位10位内に続く。
こうした高い投資人気は足元の厳しい事業環境とは対照的だ。コロナワクチンの接種が海外と比べて遅れる日本では、都道府県で緊急事態宣言がいったん解除されたのち、再び感染が拡大し、その結果、まん延防止等重点措置が導入されるなど、先行きはまだ厳しい。「星のや東京」の稼働率が3割を下回るなど、都心のホテルも厳しい状況が続いている。
ただ、過去をみると不況時にはホテルが注目されている。「08年のリーマン・ショックの時に最初に買われたのは、ニューヨークのマンハッタン地区のホテルだった。不況直後はホテルを買うのが投資の鉄則だ」。外資金融の運用担当者はそう語る。景気動向に敏感なホテルは、景気回復の振れ幅が大きければ大きいほど高いリターンが見込めるからだ。
08〜09年にはマンハッタン地区で、ヒルトンやベストウェスタンといった大型ホテルチェーンのホテル売却が話題になったという。Jリートのホテル系銘柄についても、こうした見方が一部連想される。
攻める海外勢
日本の不動産投資に意欲的なのは、海外投資家も同じだ。不動産サービス大手のジョーンズラングラサール(JLL)の調査では、20年の海外投資家の投資額は2年連続で増加し13年ぶりの高水準の1兆5548億円だった。全体に占める比率は34%と、ファンドバブルだった07年の水準に並んだ。欧米と比べてコロナの死者数が少なく経済への打撃が小さく、安定した投資先として評価する見方が広がっている。
都市未来総合研究所の平山重雄氏は「21年の日本の不動産取引は活発化する方向だ」とみている。
コロナで落ち込んでいた世界の景気は、ワクチン接種の普及で急回復の過程にある。経済協力開発機構(OECD)は3月9日公表した世界経済見通しの中間報告で、世界経済の生産が21年半ばにはコロナ前の水準を上回ると予想した。ドイチェ・アセット・マネジメントのアジア太平洋不動産リサーチヘッドの小夫孝一郎氏は「これまでは海外勢を中心にリスクをとる投資が目立ったが、今後は投資口価格の回復でJリートによる買いも再開が予想される。取得競争になるだろう」と語る。
(桑子かつ代・編集部)