経済・企業“黒船”EVバス来襲!

自動運転バス最前線 茨城県境町が全国初導入 高齢者の足の切り札に=永井隆

    水運で栄えた茨城県境町にやってきたフランス製の自動運転バス 撮影=佐々木龍
    水運で栄えた茨城県境町にやってきたフランス製の自動運転バス 撮影=佐々木龍

    「地方で深刻化する高齢化は、メーカーの技術革新や法改正を待ってはくれない。そのため、できるところから始めた」

     茨城県境町の橋本正裕町長は、そう力を込める。同町は昨年11月、仏ナビヤ(NAVYA)社の自動運転EV(電気自動車)バス「アルマ」(オペレーター含め11人乗り)を3台導入し、生活路線バスとしての運行を始めた。自治体による自動運転バスの運行は全国初だ。

     往復5キロの路線で町中心部の一般公道を定時運行し、乗車料金は無料。自家用車の扱いだが、実質的には住民の足となる路線バスだ。ソフトバンク子会社のボードリー(旧SBドライブ)が運行と管理を担い、ナビヤ社の輸入代理店であるマクニカが車両のメンテナンスを行っている。

     マクニカの福田泰之スマートモビリティ事業推進部長は「自動運転にはEVが必須。障害物を検知する光センサー技術“LiDAR(ライダー)”などに大量の電気を使うが、EVなら精密な制御も可能になる。ガソリンエンジン車やハイブリッド車などではできない」と指摘する。

     車体はフレーム構造で、リチウムイオン電池が床下に収納されて低重心。オペレーター1人が乗車し、ステアリングではなくゲーム機のコントローラーで右左折など一部を制御する。「オペレーターは中型自動車第一種運転免許が必要なため、みんなで教習所に取りにいきました」とボードリーの田口貴之執行役員は笑う。

    目指すは無人運転

    「決断や実行力でスピードこそ重要」と語る茨城県境町の橋本正裕町長 撮影=佐々木龍
    「決断や実行力でスピードこそ重要」と語る茨城県境町の橋本正裕町長 撮影=佐々木龍

     自動運転バスの管制室は、利根川土手に面した複合施設「河岸の駅さかい」の中にある。河岸の駅さかい前を出発したバスがゆっくりと走り出した。最高時速は20キロで、歩道がない古い街並みの道路を静かに北上する。バス停は、病院や郵便局、銀行など8カ所で、中心部北側の「境シンパシーホール」を目指す。

     バスは進行する道に駐車している車など障害物があると、車両から360度監視しているLiDARが検知。自動で回避し、危険な場合は停車する。「最近は、町の人たちの理解が進み、路上駐車は減りました」とボードリーの長橋愛氏が話す。

     現在の自動運転はオペレーターの同乗が必要な「レベル2」だが、22年の道路交通法改正を視野に入れ、一般公道で地域を限定してシステム主体の無人運転が可能な「レベル4」の実現を目指す。事業予算は5.2億円(5年間)で、今年3月には内閣府の「地方創生推進交付金」で年間事業費の約半額補助が決まった。

     境町には鉄道駅がなく、路線バス網も限られているため、90代でも運転していたそうだが、「ようやく高齢者が移動できるインフラができました」(橋本町長)。

    (永井隆・ジャーナリスト)

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