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日本のEVバスに採用される東芝の新型EV電池が中国と韓国をつき崩す日:動画付き

    北九州市のEVモーターズ・ジャパンが商品化しているEVマイクロバス
    北九州市のEVモーターズ・ジャパンが商品化しているEVマイクロバス

     北九州のベンチャー企業が年内に商品化するEV(電気自動車)バスに東芝製の新型のリチウムイオン電池が採用される。

    2万回の充放電でも劣化しない

    東芝の新型電池は容量こそ小さいが、事故など外部からの圧力でも発火する可能性が低く、「5分の充電で50㌔の走行が可能」。しかも2万回の充放電を繰り返しても劣化が少ない高い耐久性を持つのだ。

    車載電池といえば中国のCATLやBYD、韓国のLG化学やサムスンSDIの中韓4社が世界で6割のシェアを握る圧倒的な強さを示している。

    しかし、耐久性や安全性、ライフサイクルコストつまり生産から廃棄までにかかる生涯のコストに優れている、という点で日本製の新型電池が中国や韓国に勝てる可能性がでてきた。

    極寒地の北欧・ロシアのEVバス電池として実績あり

    東芝のリチウムイオン電池はすでに北欧やロシアなど極寒地のEVバスに採用されてきたが、充放電を頻繁に繰り返すEVバスやシェアリングカーに向いていることから、この電池をさらに進化させ、今後日本でも本格的に導入される日本のEVバスへの採用を働きかけてきた。

    採用を決めたのは北九州のファブレスベンチャー

    東芝製の電池を採用したEVマイクロバスを年内に商品化するのは、

    EVベンチャーの「EVモーターズ・ジャパン(EVM)」(本社・北九州市)。

    EVMはいわゆるファブレス(工場をもたない製造業)として、バスやトラック、EV充電設備などを展開している。

    今年商品化したEVマイクロバスは29人乗り。価格は約2000万円で、同じクラスの中国BYD社製「J6」の1950万円とほぼ同じ。リチウムイオン電池は、正極にリン酸鉄を使う安全性の高いタイプで、最初は中国のCATL(寧徳時代新能源科技)から電池を調達している。まずは欧州車の製造も手掛ける中国メーカーが、最終組立を行っている。

    これに続き、年内に商品化するマイクロバスに、東芝が開発を進めていたニオブチタン系酸化物(NTO)を負極材に採用した新型リチウムイオン電池が搭載される。希少金属(レアメタル)のニオブから作られる添加剤を負極材に使う電池だ。

    走行音は静か。低床で安定した走り。「運転に違和感はありません」とドライバー氏
    走行音は静か。低床で安定した走り。「運転に違和感はありません」とドライバー氏

    スズキのマイルドハイブリッド車で実績ある東芝の電池

    東芝はこれまで、負極にチタン酸リチウム(LTO)を使ったリチウムイオン電池「SCiB」を展開。「ワゴンR」などスズキのマイルドハイブリッド車や三菱自動車のEV「i-MiEV」などに採用されてきた。

    「SCiBは釘を刺しても発火しない」(スズキ首脳)と話す。現実に、10年ほど前にスズキは、現在はトヨタなどが採用している旧三洋製(現パナソニック製)を使っていたのを、安全性の観点からSCiBに切り替えた経緯がある。

    ブラジル産のレアメタルを負極材に使い進化させた東芝

    NTOは理論体積容量密度がLTOの約3倍あり、同時に長寿命化や超急速充電を実現させた。車体は現行のバスよりもややコンパクトにする計画だが、電池のコストが上がるため車両価格も上がる。

    NTOの原料となるニオブはハイテンと呼ばれる薄くて軽くて丈夫な高張力鋼の添加剤に使われていることでも有名だ。

    リチウムイオン電池の負極材に使う場合はハイテンほどの高純度は必要なく、現在の確認埋蔵量だけでも200年分ある。

    しかもニオブはブラジルのCBMM社が世界の8割を供給し、日本製鉄、JFEスチール、双日、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の4社が計10%の株式を保有している。

    そして東芝はこのニオブの負極材で実に80件以上の特許も取得している。

    EVモーターズ・ジャパンの佐藤裕之社長
    EVモーターズ・ジャパンの佐藤裕之社長

    5分の充電で50㌔走行は路線バスに向いている!

    東芝の電池採用を決めたEMJの佐藤裕之社長は「バスは通常、15年から20年は使う。EVバスの場合、その間に何度か電池を交換する必要が生じる。これに対し、NTOなら交換の必要がない。なので、トータルとしては割安となる」と東芝製電池採用のメリットを語る。「5分の急速充電で50キロメートルの走行が可能になる」(佐藤社長)とも語り、始点・終点で充電できる路線バスに向いている点を強調する。

    しかも急速充電性能を利用すれば、電池の搭載量を減らして車両価格を抑えること可能だ。EMJとはして価格の安いCATLの電池を搭載した現行バスと、東芝の新型電池を搭載した価格は高いが高性能な新型バスと、EVバスの商品ラインを広げていく。

    23年中頃には北九州市で約20億円を投じて最終組み立て工場を建設する。これにより、日本製EVバスとして25年の大阪万博の会場で走行させていく考えだ。

    埼玉県久喜市のコミュニティーバスに導入された中国BYDのEVバス 撮影=佐々木龍
    埼玉県久喜市のコミュニティーバスに導入された中国BYDのEVバス 撮影=佐々木龍

    3車種のEVバスを乗車してみたら…

    筆者はこれまで日本で採用されたEVバスを3車種乗ってきた。

    一つは埼玉県久喜市がコミュニティーバスに採用したBYD社「J6」の29人乗りEVバスだ。昨年11月から日本の自治体で初めて自動運転EVバスを、生活路線バスとして運行させている茨城県境町にも取材し、仏ナビヤ(NAVYA)社製の自動運転EVバスにも乗車した。

    そして今回は 3車種目でEVモーターズ・ジャパン社が横浜市で行ったEVバス(29人乗り)の試乗会で実際に乗った。

    ファブレスなので、中国で最終組立されているが、開発・設計は日本資本である。そのせいなのか、先進性を追求している。

    BYDもナビヤもEVMもモーターで駆動するため、走行音は静かだが、今回は初めて大雨の中で乗車したこともあり、力強く、されど静かに走行できるEVならではの特徴を強く感じた。

     EVMのバスは例えば、ボディーには欧州製FRPを採用して軽量化を図っている。「このクラスで車重が8トンを切っている」と運転手さんは語っていた(動画参照)。

    車いす用のスロープはステップに内蔵されている(BYDのEVバス「J6」) 撮影=佐々木龍
    車いす用のスロープはステップに内蔵されている(BYDのEVバス「J6」) 撮影=佐々木龍

    ガソリン車にないEVバスの優れた運転・走行性能

    モーター性能と相まって、加速性能にも優れる。トルクフルに、スッと前に出る感じがする。

    雨の日には有効な電子ミラーシステムも採用されている。車両の4隅にカメラを配し、運転席左右のモニターの合成映像で確認することができるのだ。これは便利で安心だ。

    四輪ディスクブレーキなのも、ドライバーへの配慮だろう。

    低重心にして、揺れが少なく安定走行できるよう設計されているのは、BYDのJ6とも共通する。

    水運で栄えた茨城県境町にやってきたフランス製の自動運転バス 撮影=佐々木龍
    水運で栄えた茨城県境町にやってきたフランス製の自動運転バス 撮影=佐々木龍

    みんな日本製EVバスを買いたい

     今年4月、自動運転EVバスを、生活路線バスとして運行させている茨城県境町を取材した際、境町の橋本正裕町長は「本当はトヨタから買いたかったが、日本製EVバスがない」と話していた。

    高齢化する住民の足として、走行中には排ガスを一切出さず、低床で揺れが少ないEVバスの必要性は高いと感じた。

    ついにようやく、日本製電池が搭載されたEVバスが走り出すことになる。

    (永井隆・ジャーナリスト)

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