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経済・企業“黒船”EVバス来襲!

知られざる日本製 極寒の地のEVバスにも採用 東芝「SCiB」電池の実力=金山隆一

 2万回もの充放電に耐えられ、事故など外部からの圧力でも発火する可能性が低い、安全性の高い日本製の電池がある。負極材にチタン酸リチウムを使った東芝のリチウムイオン電池「SCiB」だ。2008年に商品化され、減速時のエネルギーを利用して発電し、加速時にはその電力でエンジンをアシストする「マイルドハイブリッド車」に採用。納入実績はスズキの「ワゴンR」など同社向けだけでも340万台を数える。

 EV向け電池としてもホンダの「フィット」や三菱自動車の「アイミーブ」などに採用されている。急速充電を繰り返しても劣化しにくい特性を持ち、寒冷地など過酷な環境でも充電できる。東芝によれば「3分の急速充電で80%の充電が可能」。このため、16年には北欧、18年にはロシアなど極寒地のEVバス用電池に採用された実績を持つ。「停留所などで少しずつ充電していく方式を採用している北欧で評判がいい」(東芝)。

 また、高い安全性が求められる鉄道の非常用電源にも採用されており、東京メトロ丸ノ内線の非常用電源装置、JR西日本の寝台列車「瑞風」のハイブリッド駆動システム、JR東海のN700S新幹線の停電時に備えたバッテリー自律走行システム、ほかにも港湾クレーン、物流倉庫のロボット、工場の自動搬送装置の電池に使われている。

新たな負極材も開発

 最大の欠点はセル(蓄電池の構成単位)の電圧が低いこと。このためエネルギー密度は低くなり、航続距離を延ばそうとすれば電池を大型化せざるをえない。例えば、日本でも今、売れ始めている米テスラの「モデル3」(航続距離386キロ)に採用されている電池パックの容量は55キロワット時。これに対し、東芝のSCiBはマイルドハイブリッドなどに採用されている電池1個の容量が24ワット時だ。

 つまり、1台の車に10個程度のセルを搭載しても、テスラの200分1程度に過ぎない。価格も炭素系負極材を使うリチウムイオン電池に比べると高い。ただし「12分の充電、12分の放電を2万回繰り返しても9割の容量を維持できる。ライフサイクルコスト(生産から廃棄までにかかるコスト)で考えれば、(充放電が頻繁な)バスやシェアリングカーでの使用に向いている」(東芝)と反論する。

 東芝はこのSCiBをさらに進化させ、負極材に「ニオブ」という希少金属を使ったリチウムイオン電池の開発を進めている。22年にもサンプルの出荷を始め、軌道に乗ればEV用電池で年間数千台分以上の生産が可能になるとみられる。エネルギー密度はSCiBの1.5倍で、価格も安くする目標だ。性能面では「6分の急速充電でSCiBと比較して1.6倍まで電気を蓄えられる」(東芝)。

アップルも注目?

 車載用のリチウムイオン電池市場では、中国CATLを筆頭に韓国LG化学、パナソニック、韓国サムスンSDI、中国BYDの上位5社で8割以上のシェアを占める。ただ、一般的なリチウムイオン電池では、気温が下がると電解液の働きが鈍くなり、放電時に得られる電力量が少なくなる。また、コバルトなど希少金属を正極の原料として使うが、資源量が限られるうえコンゴ民主共和国など特定地域に産出地が偏在するのも課題だ。

 一方、ニオブはハイテンと呼ばれる薄くて軽くて丈夫な高張力鋼の添加剤に使われているが、負極材に使う場合はハイテンほどの高純度は必要なく、現在の確認埋蔵量だけでも200年分ある。しかもニオブはブラジルのCBMM1社が世界の8割を供給し、日本製鉄、JFEスチール、双日、石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の4社が計10%の株式を保有。東芝はニオブの負極材で80件以上の特許も取得している。

 実はこの東芝のSCiB、米アップルが開発を進めているとされるEV「アップルカー」の電池に採用されるのでは、との観測報道が今年2月に流れ、大きな話題になった。東芝は否定したが、それほど耐久性と安全性では定評がある。

(金山隆一・編集部)

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