週刊エコノミスト Online Clubhouseは終わらない?
なぜ人はSNSでプロフィールを「盛る」のか?「プロフィールいじり芸」で大人気の「クラブハウサー」が語る「映え文化」への違和感
今年初めに突如注目を集めた、アメリカ発の音声SNS 「Clubhouse(クラブハウス)」。
「コロナ禍」でコミュニケーションの機会が限られていた中、多くの有名人の参加など、当初は爆発的な人気を博した。
が、ここへ来て人気、話題ともに低下しているのではないかとも言われている。
Clubhouseを使っていない人ほど、そうした感想を持ちやすいようだ。
実際に使ってみれば一目瞭然。連日、様々なルームが立ち、多くの人々がいろんな話題に花を咲かせている。
しかも、5月19日にはAndroid版がリリースされ、今後さらに注目を集める可能性が高い。
そんななか、Clubhouseにおいて絶大な人気を誇るルーム「スナックぴーやま」を運営する山之内涼さんに、現在Clubhouseで盛り上がっていることについて語ってもらった。
Clubhouseは「意味のわからない横文字を語る人が多い」
山之内さんがClubhouseに登録したのは、ブーム初期の1月28日。
その第一印象は、「意味のわからない横文字を語る人が多い場所」だったという。
20人ほどを前に初めて開いたルームでは、学生時代の後輩と共に彼らの“真似”をしながら話したという山之内さん。
「後輩と一緒にルームを立ち上げ、後輩と話してみたんです。
その時、そういう『意味の分からない横文字』をいじるようなトークをしてみたところ、意外なほど面白がってもらいました」
山之内さんは「スナックぴーやま」というルームを毎晩開いている。
「スナック」としているのは、バーのような敷居の高い場所ではなく、誰もが気軽に立ち寄れる場所をイメージしているからだという。
「プロフィールいじり」が大ヒット!一躍人気ルームに
「スナックぴーやま」のメインコンテンツは、山之内さんが訪問者のプロフィールを読み上げ、それを「いじる」という「トーク芸」だ。
「SNSが普及し、誰もがプロフィールを自分で書くようになっています。
ただ、そうしたプロフィールを丁寧に見ていくと、意識的にせよ無意識にせよ、少なからず『盛って』いたりすると思います。
そういう『プロフィール』の微妙なツッコミどころをいじるのですが、なにも批判的に紹介しているわけではありません。読み上げられた人が嫌な気分にならないように心がけています」
ルームには「すごくない人大歓迎」と言うサブタイトルもついている。
「スナック」というコンセプト同様、「誰でも気軽に入りやすい場所」をアピールするとともに、「自分は人よりもすごい」ことを無意識のうちにアピールすることが日常風景になっている、SNSカルチャーへのささやかな風刺でもあるようだ。
「ClubhouseをはじめSNSにおいて『誰々がすごい』と語り合う雰囲気に違和感を感じていました。芸能人、経営者であれば、無条件で『すごい』のか……?
もちろん、そうした方達は『すごい』方々ではあるのですが、僕は家族のために必死で働いているサラリーマンや、子供のために毎朝早起きしてお弁当作っているお母さんも、同じように『すごい』と思っています。そもそも僕自身も別に『すごい人』ではないですから」
登録から3ヶ月「ほぼ毎晩話し続けた」と言う山之内さん。
その絶妙なトークを聞きに集まる人が次第に増え、今では深夜帯屈指の人気ルームにまで成長しているという。
その間、「微妙な場面」に出くわすこともあったという。
「ある時、“嘘のプロフィール”を書いている方が、ルームにいらっしゃったんです。
僕の好きな映画に出演していると書かれていたので、気になって『どのシリーズが好きですか?』とか、『何の役で出演されているんですか?』と質問をしてみたんです。
でもその方は、『いや、えっと、あの…』みたいな終始歯切れの悪い対応で……。もしかして嘘なのかな?と(苦笑)」
有名人とのつながりを自慢……SNSの痛い人が陥る「オーラ借用」とは?
山之内さんのルームには、設楽洋氏(株式会社BEAMS社長)など、多くの著名人が訪れるという。
著名人にとっても快適なコミュニティを運営する秘訣は、「質問攻めにしない」ことだと山之内さんはいう。
「当初は“すごい”経歴の方とフラットに話せることが、Clubhouseの魅力だと思われていました。
ただその一方で『すごい人と話せた自分がすごい』と勘違いして、SNSで自慢し合う風潮も見られました。
突然会話に割り込んで来たり、マナー違反をする人も稀ではありますがいます。
ただそこは僕がコントロールするように気をつけています。
僕は元々大手芸能事務所でタレントのマネージャーをしていたので、フォローできそうなときには、その血が騒ぐのかもしれません (笑)」。
SNSで舞い上がってしまう「痛い人」の正体
Clubhouseには、一部でネガティブな論調も見受けられる。
これについては「過去に“嫌な体験”をした人が多いせいでは」と山之内さんはいう。
「実際、Clubhouseには怪しげな人もいますからね。
昼間ずっとClubhouseにいる人はほぼ仕事していませんから(笑)。
プロフィールが怪しげで、偉そうな態度を取る人とか、それっぽく聞こえるけど、内容の薄い話ばかりする人もいます。
あとはいきなり話に割り込んできて、議論を吹っかける迷惑な人も……。
そうした人に出会ってしまった不快感が、Clubhouse自体へのマイナスな論調につながっているのかなと思います」。
「Clubhouseで数回話しただけなのに、著名人と『仲が良い』とアピールする人を、当初はかなり見かけました。
僕はどちらかというと『斜めに世の中を見る』ほうなので、そういう悪い意味で意識が高そうな人には違和感を感じました。
そういう『有名人と仲が良いです』みたいなアピールをすることを、僕は『オーラ借用』と呼んでいます。
『ミスコンに出ている○○ちゃんが友達で……』と話しているのを聞くと、『オーラ借用』してるだけじゃん!と思ってしまう(苦笑)。
一方的にオーラを借りるだけの関係は『Win-Win』じゃないと思うんです」。
「廃れた」「飽きた」Clubhouseへのネガティブな論調に思うこと
Clubhouseの今後をどう予想しているのだろうか。
「テレビ、ラジオ、YouTubeなどの選択肢に、新たにClubhouseが加わるだけで、ユーザーの時間を取り合う構図自体は変わらないと思っています。
長い間ラジオは衰退が危惧されていましたが、まだ無くなっていない。
それを踏まえても、Clubhouseは当分続いていくと思います。
Clubhouseという“バーチャル”の世界と、現実との違いを理解して楽しめるユーザーが徐々に増えていけば、さらに人気が定着していくのかなと思っています」
音声SNSはまだまだ黎明期。
今後ますますその動向から目が離せない。
山之内涼(やまのうち・りょう)
1988年9月19日生まれ。32歳。千葉県出身。A型。
普通部より慶應義塾に学び、卒業後の2011年に大手芸能事務所に入社し9年間マネージャー職に従事。
2020年7月に退職し独立。“ハイパーメディアクリエイター”としてコンテンツのプロデュースやキャスティング、コンサルティング等を手がける。
また2021年3月よりTikTokマーケティング等を行う広告代理店である株式会社TORIHADAの企画制作チームの管理職としても参画している。
【Clubhouse】
https://www.joinclubhouse.com/@p_yama0919
【Instagram】
https://www.instagram.com/p_yama_clubhouser/
(取材・文 白鳥純一)